報酬請求権
注文者の責任ではない事由によって仕事を完成することができなくなった場合,又は請負が仕事の完成前に解除された場合,既にされた仕事の結果のうち,可分な部分の給付よって注文者が利益を受けるときは,その部分を仕事の完成とみなして,請負人は,その利益の割合に応じて報酬を請求することができます(634条)。
請負が仕事の完成前に解除された場合であっても仕事を完成させることが可能な場合があるため,仕事を完成することができなくなった場合(仕事を完成させることが不能な場合)が別途規定されています。
いずれの場合も,注文者だけでなく請負人の責任でない場合も634条によって割合的な報酬の請求を行うことができます。
また,いずれの場合も,請負人に責任がある場合が含まれており,請負人は,責任があったとしても割合に応じた報酬の請求を行うことができます。
ただし,この場合,注文者から,損害賠償請求を受けることがあります(415条)。
注文者の責任によって仕事を完成することができなくなった場合には,注文者は,請負代金全額の支払いを拒むことができません(536条2項)。
ただし,請負人は,残工事の履行を免れたことにより利益を受けた場合には,注文者に利益を償還しなければなりません(536条2項但書)。
請負が仕事の完成前に解除された場合には合意解除が含まれますが,合意解除が請負契約を遡及的に消滅させて報酬の請求を行わないという趣旨のものと解釈される場合には,634条による割合的な報酬請求はできないと考えられています。