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社外取締役読本

機関設計のポイント

株式会社は,株主総会と取締役という機関を設置すれば成立するのですが(法326条1項),公開会社その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社(法2条5号)では取締役会を設置しなければならないとされ(法327条1項1号),大会社最終事業年度にかかる貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上,あるいは,最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の株式会社では監査役会を設置するか,三委員会設を設置するか,監査等委員会を設置しなければなりません(法328条1項大会社においては,会計や経理処理が複雑化・高度化し,会計の専門知識が必要になりますので,会計の専門家である会計監査人を設置する必要があります(法328条1項,2項・法327条)。)。

よって,公開会社であり,大会社である上場会社の機関は,監査役設置会社,監査等委員会設置会社,三委員会設置会社の3つのうちのいずれか日本の上場会社の99%程度が監査役会設置会社あるいは監査等委員会設置会社であり,三委員会設置会社はごくわずかです。
三委員会設置会社を採用する会社が少数にとどまっている理由として,取締役候補者の選任を社外取締役が過半数を占める指名委員会に委ねることに強い抵抗があると言われています。
であり,社外取締役は,これらのいずれかの会社の取締役会の構成員として,独立性を保ち,客観的な判断を行うことによってその職責を果たすことになるわけです。

社外取締役としては,まず,当該会社の機関構成によって,どの程度独立性が担保されており,客観的な判断を行いうる地位にあるのか理解しておく必要があります。
その上で,監査役設置会社,監査等委員会設置会社,三委員会設置会社の法定機関における社外取締役の立ち位置というものを把握しておく必要があるのです。

まず,監査役設置会社,監査等委員会設置会社,三委員会設置会社の機関構成を理解する上で,押さえておくべきポイントがあります。

  • ① 株主総会において3名以上の取締役が選任される(法331条5項)。
  • ② 取締役は,取締役会を構成する(法362条1項)。
  • ③ 取締役会において選任された業務執行役員が業務を執行する(法363条1項等)。
  • ④ 取締役会は,会社の業務執行の決定と取締役の職務の執行の監督を行う(法362条1項1号,2号)。

いずれの会社でも,①から④は共通しています。

なお,業務執行役員は,監査役会設置会社・監査等委員会設置会社においては代表取締役,業務担当取締役であり,委員会設置会社においては代表執行役と執行役となります。
ただ,3つの会社では,以下の点で機関構成が異なります。

  • ① 取締役会が,会社の業務執行の決定と取締役の職務の執行の監督をどのような形で担うのか。
  • ② いかなる機関が取締役の職務執行に対する監査を行うのか。

日本の上場企業の機関設計は,長らく監査役会設置会社で,現在でも多くの上場会社が監査役会設置会社を採用しています。監査役会設置会社においては,法362条4項で列挙された専決事項に加えて,「その他重要な業務執行の決定」を取締役会において決定し,それに基づいて代表取締役あるいは業務担当取締役が業務を執行し,取締役会において業務執行の監督をも行うという基本設計になっており,いわゆる事前チェック型(マネジメント・ボード)の経営モデルが採用されています。

そして,監査役会設置会社においては,法定されたものだけでなく,重要であると判断される業務取締役会の専決事項として,「その他重要な業務執行の決定」が含まれており,重要であるか否かは,会社の規模,取引の目的や態様,従来の取扱い等の事情を総合的に勘案して判断されます。
各取締役が手続違背による責任追及のリスクを回避するためには,重要であるか判断できないものについては取締役会の決議を経ておく必要があり,取締役会の決議事項が非常に広範に及び,迅速な会社経営を阻害する原因となっています。
につき事前に取締役会の決議を得なければならないわけですから,非常に広範な事項につき審議し,決議することになるのですが,上場会社においては,これを多数の取締役によって構成さる取締役会で行うことになります。

これが,監査役会設置会社において,迅速な経営判断を行うことができない原因となり,監督を行うための時間確保を十分に確保することができない原因ともなっているのです。

そして,何よりも,業務執行の決定と,決定に基づき執行される業務の監督を同一の機関が行うという根本的な問題を包含しており,取締役会の監督機能を実効的なものとする制度的保障がありません。
すなわち,社外取締役の独立性が機関設計上担保されていないわけです。

他方,監査等委員会設置会社及び三委員会設置会社においては,執行役あるいは取締役に業務執行の決定を広範に委譲することができるようにし,判断機関と監督機関の分化を行った上で,取締役会が主に監督機能に徹することができる設計になっています。

また,監査等委員会設置会社及び三委員会設置会社においては,取締役会の内部に設置された監査等委員会あるいは監査委員会が監査を行う,すなわち,取締役会の構成員である委員が監査を行い,取締役会の構成員として取締役会の審議に参加し,議決権を行使することにより,取締役会に監査を行う者の影響力を与えることができ,それにより監査の実効性を高める設計になっています。

さらに,三委員会設置会社では,取締役会の中核的機能といえる「指名」,「報酬」の決定も取締役会の内部に設置された委員会が行い,取締役会の構成員として取締役会に影響力を及ぼす設計になっています。

以上を前提に,3つの会社の機関構成との関係で,社外取締役の独立性がどのように確保されているのか外観します。

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