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コーポレートガバナンス

東京証券取引所は,それぞれの会社が,持続的な成長と中長期的な企業価値を向上させることで経済全体の発展に寄与することを目的としてコーポレートガバナンスコード(CGコード)を示し,それぞれの会社に,CGコードの実践を求めています。

CGコードにおいては,それぞれの会社が実践すべきものとして,5つの基本原則が定められています。
まず,株主の権利が実質的に確保されるように適切な対応をとる,そのための環境の整備を行う,株主の実質的な平等性を確保すべきであるとされています(基本原則1)。

それぞれの会社が安定した持続性を確保する上で,資本提供者である株主のすそ野を広げる,近時存在感が増している内外の機関投資家スチュワードシップ・コード(機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス)を受け入れ,当該コードに定められた7つの原則(①受託者責任の果たし方の方針公表,②利益相反の管理に関する方針の公表,③投資先企業の経営モニタリング,④受託者活動強化のタイミングと方法のガイドラインの設定,⑤他の投資家との協働,⑥議決権行使の方針と行使結果の公表,⑦受託者行動と議決権行使活動の定期的報告)を順守することを表明している機関投資家が多数存在します。
『日本復興戦略』改訂2015」においては,CGコードとスチュワードシップ・コードが車の両輪となって,投資家側と会社側双方から企業の持続的な成長が促されるよう,積極的にその普及・定着を図る必要があるとされています。
による投資を呼び込むことが不可欠となっていますが,これを実現するにあたり不可欠な前提を基本原則1として定めているわけです。

ただ,会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は,出資者である株主だけでなく,従業員,顧客,取引先,債権者,地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献が不可欠です。
それぞれの会社は,このことを認識した上で,これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきであるとされています(基本原則2)。

そして,会社の財政状態・経営成績等の財務情報や,経営戦略・経営課題,リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について,法令に基づく開示を適切に行うとともに,法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであるとされています(基本原則3)。

また,取締役会は,①企業戦略等の大きな方向性を示す,②経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行う,③独立した客観的な立場から,経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たし,会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促し,収益力・資本効率等の改善を図るべきであるとされています(基本原則4)。

さらに,それぞれの会社には,株主総会の場以外においても,株主との間で建設的な対話を行い,株主の声に耳を傾け,その関心・懸念に正当な関心を払うとともに,自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行うことが求められており,経営者は,株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と,そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきであるとされています(基本原則5スチュワードシップ・コード及びCGコードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において,重点的に議論することが期待される事項を取りまとめた「投資家と企業の対話ガイドライン」(金融庁)が示されています。)。

投資家と企業の対話ガイドライン」は,スチュワードシップ・コードとCGコードの付属文書と位置づけられており,機関投資家と企業との間で,建設的な対話が行われることを通じ,企業が,自社の理念に基づき,持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し,ひいては経済全体の成長と国民の安定的な資産形成に寄与することが期待されるとされています。

すなわち,CGコードにおいては,上記した5つの基本原則が実践されることが求められており,それを前提に,「会社が,株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で,透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」をコーポレートガバナンスと定義しているわけです。

コーポレートガバナンスを実践した経営というのは,CGコードに基づく経営なのですが,ここで誤解してはならないことは,CGコードが,一義的に定められた規範で,それぞれの会社に対して一方的に押し付けるものではないということです。

CGコードにおいては,「プリンシパルベース・アプローチ」がとられており,株主等のステークホルダーに対する説明責任等を負うそれぞれの会社が,コードの趣旨・精神に照らして適切に解釈することが求められており,コーポレート・ガバナンス報告書や投資家との対話を通じて自社の考えを明らかにし,それぞれの会社の考えを投資家に理解してもらうことが求められています。

また,CGコードにおいては,「コンプライ・オア・エクスプレイン」という考え方も採用されています。
それぞれの会社の個別事情を踏まえて,CGコードを形式的に順守することがかえって持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を損なうこともあり得ます。
そのような場合には一部の原則を実施しないということも許容されているわけです。

ただし,一部の原則につき実施しない場合には,投資家の理解が十分に得られるように説明をする必要があります投資家と企業の対話ガイドライン」においては,CGコードの一部を実施しない理由の説明を行うにあたり,当該ガイドラインの趣旨を踏まえることが期待されるとされています。

それぞれの会社が抱える個別事情を前提にCGコードの特定の原則を履践することが,持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を損なう理由を具体的に説明し,投資家の理解を得る必要があるわけです。コーポレート・ガバナンス報告書の記載内容は,他社との横並びを意識したひな型的記載になりがちですが,このような表層的な説明は「コンプライ・オア・エクスプレイン」の趣旨に明らかに反します。

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