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社外取締役読本

株主総会プロセス1

株主総会の権限

株主総会は,毎事業年度の終了後一定時期に開催される定時株主総会(法296条1項)と臨時に開催される臨時株主総会(同条2項)があります。
株主総会の機能は,会社の重要事項について意思決定を行うというものです。

取締役会設置会社における株主総会は,法令・定款に定める事項について決議を行い(法295条),業務執行に関する事項については,原則的に取締役会の決定に委ねるという構造になっています。
これが,いわゆる「所有と経営の分離」と呼ばれるものです。

また,取締役設置会社における株主総会は,招集通知に記載された「株主総会の目的である事項」のみを決議することになっており(法309条5項例外として,検査役選任決議(法316条),会計監査人の定時株主総会への出席を求める決議(法398条2項),株主総会の延期・続行の決議(法317条)があります。),欠席した株主が不意打ち的に議題にない事項につき決議されるということがないようになっています。

対話の場としての株主総会

CGコードにおいては,「上場会社は,株主総会が株主との建設的な対話の場であることを認識し,株主の視点にたって,株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を行うべきである。」(原則1-2)とされています。

CGコードにおける「株主との建設的な対話の場」というのは,単に,会社が提案した議題に対して株主が意思を表明することを指しているではなく,株主総会において,株主が質問や意見表明を行い,これに対して経営陣等が積極的に答えていくというものです。
当然のことながら,株主と経営陣等との間で行われる会話は,決議事項に関するものに限られず,報告事項に関するもの等,広範に及びます。

株主は,出資者として取締役等の役員の選解任権(法329条1項,339条1項),報酬決定権(定款に定めがない場合・361条)を有しており,株主総会は,取締役等の役員の信任を問う場となります。
そのような場で,経営者が,経営状況,経営方針,直面する課題等について説明し,株主の質問に対して積極的に答えていくというのは当然のことです。CGコードにおいては,「取締役会は,株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは,反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い,株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべきである。」(補充原則1-1①)とされています。

また,会社は,株主との対話を通じて,会社の理念や中長期的な経営計画に対する株主の理解を得ることができ,持続的な成長を実現することができます。

以上の意味で,株主総会を,単なる決議の場と捉えるのではなく,「株主との対話の場」として捉えることが重要になるわけです。

株主総会が株主との建設的な対話の場であることの前提として,株主が総会の場に出席して議決権を行使する状況が確保されていることが必要になります。
また,株主総会に出席するにあたって,株主が会社に関する情報を十分に持ち合わせていなければなりません。

株主総会開催日の集中

3月決算会社の株主総会の開催日が6月下旬の特定日に集中しているという問題があります。
議決権の代理行使(法310条),書面による議決権行使(法311条),電子的方法による議決権行使(法312条)の制度が存在するため,単に議決権を行使するという意味では,多数の会社が同日に株主総会を開催しても問題はありません。
しかし,株主総会を株主との対話の場と位置付ける場合には,多数の会社が同日に株主総会を開催するということは,複数の会社に投資している株主から対話の場を奪っていることを意味しています。

なお,CGコードにおいては,「上場会社は,株主との建設的な対話の充実や,そのための正確な情報提供等の観点を考慮し,株主総会開催日をはじめとする株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである。」(補充原則1-2③)とされています。

株主総会が特定の日に集中する一つの原因として基準日制度(法124条)を挙げられています。
すなわち,基準日の有効期間が3ヶ月とされている(同条2項括弧書き)ことから,その期間に決算手続を行う必要があり,株主総会の準備との関係で開催日が6月下旬に集中するというものです。

しかし,基準から最大で3ヶ月の間に株式を取得した株主が議決権を行使することができないという問題を考えると基準日の有効期間が3ヶ月とされていることに問題があり,それぞれの会社において,有効期間の短縮化に取り組まなければならないのであって,基準日制度が株主総会開催日集中の原因にはならないと考えています。

また,四半期短信,四半期報告,決算短信,事業報告・計算書類,有価証券報告書を有機的に関連づけすることで,事業報告・計算書類,有価証券報告書作成時間を短縮する努力を行い,株主総会の開催日を柔軟に設定することが可能になります。

書面による招集通知・参考書類の送付

株主総会の招集通知は,原則として,株主総会の日の2週間前までに発送しなければなりません(299条1項)。

複数の3月決算の会社に投資している株主は,株主総会開催日が集中していることと相まって,6月上旬に,複数の会社から株主総会関連の書類を受けとることになり,送られてきた書類を詳細に検討することができません。

このような問題を解決する手段として,CGコードにおいては,「上場会社は,株主総会において株主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報については,必要に応じ適確に提供すべきである。」(補充原則1-2①)とされ,「上場会社は,株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう,招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつその早期発送に努めるべきであり,また,招集通知に記載する情報は,株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送するまでの間に,TDnet や自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきである。」(補充原則1-2②)とされています。

それぞれの会社は,CGコードに示された基準に基づき,株主に対する情報提供の早期化への取組みを行っていますが,株主総会の招集通知は書面によって行う必要があり(法299条2項),電子的公表は代替手段に過ぎません。
また,電子的公表により開示できる情報や手段に制約があります(規則94条,同133条3項〜6項,計算規則133条2項〜6項)。

令和元年12月の会社法改正により,株主総会関連の書類を自社のホームページ等に掲載し,株主に対して書面でアドレスを通知することにより,株主に対して提供する制度が設けられました。
なお,公布日から3年6か月以内の施行とされています。

株主総会資料の電子提供制度は,定款の定めにより,株主の個別の承諾がなくても,株主総会関連の書類を電子提供できる仕組み(電子提供措置)(法325条の2)であり,上場会社等は,電子提供装置を採用しなければなりません。

電子提供措置を採用した会社は,株主総会の日時及び場所,株主総会の目的である事項などを記載した招集通知のみを発送すれば足ります(同条の4株主は,株主総会基準日までに,電子提供される事項についての書面交付請求ができ,会社は,書面交付請求日から1年経過後,書面交付終了の通知・催告を行うことができ,株主が催告期間(1ヶ月以上)の間に異議を述べなければ,書面交付請求は効力を失うことになります(同条の5)。)。

株主総会参考書類,計算書類,事業報告,連結計算書類などの内容は,株主総会の日の3週間前の日又は上記 b.の招集通知発送日のいずれか早い日(電子提供措置開始日)から株主総会の日の 3ヶ月後の日までの間,電子提供措置を講じなければなりません(同条の3,4)。

ただし,定時株主総会については,株式について有価証券報告書の提出義務がある会社が,電子提供措置開始日までに必要事項を記載した有価証券報告書の提出手続をEDINETにより実施した場合は,上記した電子提供措置は不要とされており(同条の3),有価証券報告書の開示時期の前倒しを促しています。

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