CGコード原則3-1においては,「以下の事項についても開示し,主体的な情報発信を行うべきである。」とされています。
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
そして,「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月)により,役員報酬に関する有価証券報告書への記載内容が詳細に定められました。
まず,①取締役(監査等委員,社外取締役を除く),②監査等委員(社外取締役を除く),③監査役(社外監査役を除く),④執行役,⑤社外役員(社外取締役,社外監査役等)ごとに,以下の事項を開示する必要があります。
- ① 報酬等の総額
- ② 報酬等の種類別(例えば,固定報酬,業績連動報酬および退職慰労金等の区分。以下同様)の総額
- ③ 対象となる役員の員数
また,提出日現在において,提出会社の役員の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針について
- ① 提出日現在における方針の内容,決定方法方針を定めていない場合はその旨
- ② 役職ごとの方針を定めている場合はその内容
- ③ 方針の決定権限を有する者の氏名または名称,その権限の内容,裁量の範囲
- ④ 方針の決定に関与する委員会(以下,委員会等)が存在する場合は,その手続の概要
そして,提出会社の役員の報酬等に,業績連動報酬が含まれる場合は、
- ① 業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支払割合の決定方針を定めているときは,その方針の内容
- ② 当該業績連動報酬に係る指標
- ③ 当該指標を選択した理由
- ④ 当該業績連動報酬の額の決定方法
- ⑤ 最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標,実績
また,使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものがある場合(a)総額と(b)対象となる役員の員数を開示しなければなりません。
さらに,その他の開示項目として以下のものがあります。
①提出会社(指名委員会等設置会社を除く)の役員の報酬等に関する株主総会の決議が
- (a)ある場合は
- (ⅰ)当該決議年月日
- (ⅱ)当該決議の内容
- (ⅲ)当該決議が二以上の役員についての定めの場合は当定めに係る役員の員数
- (b)ない場合は
- (ⅳ)提出会社の役員の報酬等について定款に定めている事項の内容
②最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社の場合は報酬委員会),委員会等の活動内容
役員ごとに個別開示を行う場合連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。には,以下の事項を開示しなければなりません。
- ① 氏名
- ② 役員区分
- ③ 提出会社の役員としての報酬等の
- (a)総額
- (b)連結報酬等の種類別の額
令和元年12月の会社法改正により,公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書の提出義務を負う会社,及び,監査等委員会設置会社においては,定款または株主総会決議による会社法361条1項各号に定める取締役の報酬等の定めがある場合,報酬等の決定方針として,法務省令で定める事項を決定しなければならないとされました(法361条7項)。
報酬等の決定方針の詳細は,未だ定められていませんが,取締役の個人別の報酬等についての報酬等の種類ごとの比率にかかる決定の方針,業績連動報酬等の有無およびその内容にかかる決定の方針,取締役の個人別の報酬等の内容にかかる決定の方法(代表取締役に決定を再一任するかどうか等を含む)等が含まれる予定です。
なお,現在,不確定額報酬または非金銭報酬(法361条1項2号または3号)に関する議案の内容を定め,または改定する議案を株主総会に提出する場合,取締役はその報酬議案の事項を「相当とする理由」を説明しなければなりませんが(法361条2項),確定額報酬(法361条1項1号)に関しても「相当とする理由」を説明しなければならなくなりました(法361条4項)。
また,公開会社は,法務省令により下記の事項等に関し,事業報告による開示が求められる予定です。
- 報酬等の決定方針に関する事項
- 報酬等についての株主総会の決議に関する事項
- 取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項
- 業績連動報酬等に関する事項
- 職務執行の対価として株式会社が交付した株式または新株予約権等に関する事項
- 報酬等の種類
取締役の選・解任
CGコード原則3-1においては,「以下の事項についても開示し,主体的な情報発信を行うべきである。」とされています。
- (ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
- (ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選解任と取締役・監査役候補の指名を行う際の,個々の選解任・指名についての説明
なお,「取締役会は,取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス,多様性及び規模に関する考え方を定め,取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。」(補充原則4-11①)とされています。
取締役会の監督機能の中核は,経営陣幹部の選解任,役員の指名,と報酬の決定にあります。そして,報酬の決定に関しては令和元年12月の会社法改正によりについては法定されました。
経営陣幹部の選解任,役員の指名を行うにあたっての方針と手続についても,報酬に関するものと見劣りのない程度に具体的に定め,これを開示していくという姿勢が求められます。