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株主総会プロセス2

機関投資家・外国人投資家

取締役会は,株主総会に出席しない株主が電子的方法により議決権を行使する(電子投票制度)ことを定めることができます(法298条1項3号,4項)。電子的方法により議決権行使は,会社が設置するウェブサイトにアクセスして議案の賛否を入力する方法が一般的です。

機関投資家や外国人投資家は,自ら株式を保有せず,名義上の株主が信託銀行やカストディー銀行になっているのが一般的です。
それぞれの会社は,名義上の株主(信託銀行やカストディ銀行)に対して,株主総会関連の書類を送付することになり,信託銀行やカストディー銀行は,実質的な株主である機関投資家や外国人投資家に株主総会関連書類を提示し,議決権行使の指図を受けて議決権が行使されています。

これは,議決権の電子投票制度を採用している場合であっても同じです。

この結果,機関投資家や外国人投資家は,極めて限られた時間で株主総会関連書類を精査し,議決権行使の判断をしなければならないとともに,信託銀行やカストディー銀行も短期間で複数の実質的な株主からの指図を集計して権利行使をしなければならないという問題があります。

この問題を解決するものとして,東京証券取引所は,「議決権行使プラットフォーム1000社以上の上場会社が参加しています。」を設けています。

それぞれの会社が「議決権行使プラットフォーム」に参加していると,実質的な株主が信託銀行やカストディー銀行に対して利用申請を行うことができ,信託銀行やカストディー銀行は「議決権行使プラットフォーム」に対して委託口座データを送ります。

それぞれの会社が「議決権行使プラットフォーム」に株主総会関連の書類をデータとして提供すると,実質的な株主に対して直接データが提供され,実質的な株主は,「議決権行使プラットフォーム」に対して議決権行使の指図を行うと,それぞれの会社に対して議決権が行使されるというシステムです。

CGコードにおいて,「上場会社は,自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も踏まえ,議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべきである。」(補充原則1-2④),「信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が,株主総会において,信託銀行等に代わって自ら議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望する場合に対応するため,上場会社は,信託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである。」(補充原則1-2⑤)とされていますので,機関投資家や外国人投資家が株主として存在する会社においては,「議決権行使プラットフォーム」に参加する必要があります。

なお,外国人投資家からは,「議決権行使プラットフォーム」の利用を前提にした上で,議決権行使までの時間的余裕がないと批判されています。

このような外国人投資家からの批判は,最終事業年度終了日から3ヶ月以内に株主総会を開催するという制度諸外国と比較して決算期間が短く設定されています。そのものに由来するものです。

日本の定時株主総会は「決算総会」と位置付けられており,その上に,利益配当は最終事業年度の利益の分配であると考えられていることから,最終事業年度終了日の株主に議決権を行使させなければならないと考えられています。

ところが,定時株主総会においては,決算の承認以外に,会社の重要な意思決定も行われ,近時では株主との対話の場としても機能しています。
会社の重要な意思決定(特に役員の選任)や対話を行うべき株主は,定時総会が開催される時点で株主であるべきですから,最終事業年度終了日から時間が経過し過ぎると,議決権行使の機会が失われる,また,株主との対話の場としての機能が損なわれる程度が大きくなります。

株主総会関連の資料の提供から十分な期間を設けて株主総会を開催するべきとする要請と上記した問題との均衡を図るという観点から現在の制度が成り立っています。

株主総会関連の資料の提供から十分な期間を設けて株主総会を開催する制度にするには,最終事業年度終了日の株主に議決権を行使させるという考え方を改める必要があり,そのためには,定時株主総会の主な機能が,会社の重要な意思決定を行う,株主との対話の場を提供するところにあるとの理解を定着させる必要がありますし,利益配当は最終事業年度の利益の分配であるという考え方を改める必要があります。決算手続を経て確定した剰余金の額を前提に計算される配当可能額の枠内であれば,直後の事業年度において何度でも配当が可能になっている(法451条)ことから,剰余金の配当は直前の事業年度の利益分配と捉える必然性はないと言われています(「企業と投資家の建設的な対話に向けて 〜対話促進の取組みと今後の課題〜」全国株懇連合会・44頁)。

株主提案権

株主との対話」は,基本的には,会社からの提案によって行われることになりますが,株主からの提案によって行われることもあります。

株主から提案する手段として,少数株主招集総会(法297条)と株主提案権(法303条〜305条)があります。
そして,株主提案権には,議題提案権(法303条),当該議題につき議決権を行使することができる株主が株主総会の場においてする議案提案権(法304条),株主総会の目的である事項について株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知することの請求権(法305条)があります。

これらの権利が,特定の株主によって濫用的に行使された場合,会社と株主との対話の機会が奪われることになりかねません。
そこで,令和元年12月の会社法改正により,株主が第305条第1項の規定による請求をする場合において,当該株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときは,10を超える数に相当することとなる数の議案については株主に通知することを求めることできなくなりました。
なお,株主が議案の優先順位を定めていないときは,取締役が10の議案を選定することになります。

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