交通事故
社外取締役読本

当該会社に関する事項

①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(法362条4項6号,399条の13第1項1号ハ,416条1項1号ホ)
⑤使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(規則98条1項4号,100条1項4号,110条の4第2項4号,112条2項4号)

会社の業務執行は,取締役によって行われることから,取締役の職務執行が法令・定款に適合することを確保することによって公正性の確保を図ろうとするものです。

また,会社の業務の執行が取締役等の指揮監督の下に使用人を通じて実行されることから,使用人の職務執行が法令・定款に適合することを確保する体制がなければ,公正性の確保が図れないために設けられています。

なお,多くの会社が,取締役の職務施行が法定及び定款に適合することを確保するための体制と,使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制をまとめて決議しています。

決議すべき事項として,以下のものが示されています(論点解説337頁)

  1. 会社の業務に応じて生ずる可能性が高い法令違反行為(横領,談合,顧客に対する欺罔ないし脅迫的行為,業績の粉飾等)の把握
  2. その典型的な法令違反行為の監視・予防体制(法令遵守マニュアルの作成や使用人間の監督体制)
  3. 法令違反が生じた場合の対処方法・対処機関に関する事項等

多くの会社では,最上位規範として「経理理念」,「倫理規定」等を設けて法令等遵守の基本精神を定め,関係法規や規則に基づき,各部門のリスクを分析した上で,諸規程やマニュアル等が具体的に定められています。

そして,監視・予防体制として,担当役員を設け,担当役員の下に担当部署あるいは委員会を設けて,各部門,担当部署等,担当役員の連携体制を設ける,担当部署等に法令等を遵守するための研修等を行わせるとともに,各部門に対するモニタリングを行う,内部通報制度の設置等が考えられます。

また,再発を防止するためには適正な社内処分が必要になりますので,社内処分のための基本的な手続等について定めておくことになります。

なお,政府が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表していることもあり,多くの会社で,反社会的勢力への対応に関する事項が決議の対象とされています。

②取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に対する体制(規則98条1項1号,100条1項1号,110条の4第2項1号,112条2項1号)

業務の適正さを確保するためには,監査役の監査が実効的なものであることが求められます。
そして,その前提として,事後的に監査役が取締役の職務執行にかかる情報を把握できなければなりません。

そこで,取締役の職務執行に係る情報が適切に保存され,改ざん等がなされない状態におかれ,かつ,監査役がその情報に容易にアクセスできるような状況が確保される必要があります。

なお,ここでいう「取締役の職務の執行に係る情報」とは,取締役の職務の適法性・効率性を検証するために必要な情報のことですが,代表取締役,業務担当取締役の職務に加えて,監督機関としての職務も含まれ,取締役が使用人を用いて業務執行を行った場合の使用人の行為に関する行為も含まれると解されています(論点解説336頁)。

決議すべき事項として以下のものが示されています(論点解説336頁)

  • 取締役が意思決定,業務執行,監督を行う場合において,それらの行為をしたことをどのように形で記録として残すか
  • その記録を何年間,どこに保存するか
  • その記録を検索し,閲覧するには,どのような方法をとるか
  • 使用人の行為をどのように記録・保存・閲覧するか

決議する内容として,文書管理規定の生成,情報の保存・管理に関する責任部署,情報の管理方法・管理期間,情報アクセスに関する体制等が一般的です。
また,個人情報の保護や,ノウハウ,顧客情報等の情報資産の管理方法について決議する会社も少なくありません。

③損失の危険の管理に関する規定その他の体制(規則98条1項2号,100条1項2号,110条の4第2項2号,112条2項2号)

事業活動は,様々なリスクにさらされており,業態とは無関係なリスク,業態特有のリスクが存在し,事業を継続していくためには発生するリスクを管理する必要があります。

リスクを管理するためには,リスク事象の洗い出し,リスク事象の発生可能性・頻度,発生時に会社に与える影響を分析・評価する必要あります。
そして,洗い出されたリスクにつき,リスクを完全に回避する,許容範囲まで低減を図る,許容する,等に区分し,回避,低減のための手順を構築することになります。

この点,決議すべき事項として以下のおのが示されています(論点解説336頁)。

  1. 会社の業態に応じて生ずる可能性があるリスクとして,どのようなものが考えられるか
  2. リスクの現実化を未然に防止するための手続・機構
  3. リスクが現実化した場合の対処方法
  4. 当該手続や対処方法を実施するための人的・物的体制に関する事項

想定されるリスクを分類し,分類されたリスクに応じた担当部署を定めたリスク管理規定,リスクが現実化した場合の対応マニュアル,リスクの管理状況に関するモニタリングに関する決議を行っておくのが一般的です。

④取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するための体制(規則98条1項3号,100条1項3号,110条の4第2項3号,112条2項3号)

会社は,利益をあげることを目的とするものであることから,業務が適正に執行されていると評価されるためには,業務が法令や定款に従って行われているというだけでなく,業務が効率的に行われていることも必要であるからであるとされています。

しかし,取締役の職務執行が効率的に行われることと,取締役の職務の適正を確保することとは異質なものであり,後者の延長線上に前者が存在しているわけではありません。

内部統制システムにおいて,取締役の職務執行の効率性を確保するための体制が含まれている理由は,上場会社との関係でいえば,CGコードにおいて,サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題へ積極的・能動的に取組むための体制,経営陣による健全な企業家精神に基づく迅速・果断な意思決定を支援するための体制を整えることが求められているからであると理解しておけばよいと思います。

立法当時に,決議すべき事項として示されていたものは以下のものです(論点解説337頁)。

  1. 取締役が職務執行を行うにあたって必要な手続(決済・指揮系統等)や職務分担の合理性を検証する体制
  2. 取締役の職務執行のために必要な使用人の員数の過不足を把握するための体制等に関する事項

以上を前提に,取締役会の効率化を図る取締役会規則,重要事項について審議を行う経営会議の設置,事業計画・中長期経営計画の策定,意思決定と執行を分離する執行役の設置,取締役会の機能を強化するための任意の委員会の設置,役割分担,職務分掌に関する組織規程,職務分掌規程,職務権限規程,稟議規程等につき決議をするのが一般的です。

しかし,前記した理解を前提に,サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題へ積極的・能動的に取組むための体制,経営陣による健全な企業家精神に基づく迅速・果断な意思決定を支援するための体制等についても決議を行っておく必要があると考えています。

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