交通事故

社外取締役読本

内部統制システムの内容

取締役会の決議事項

取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令(規則100条1項,110条の4第2項,112条2項)で定める体制(法362条4項6号,399条の13第1項1号ロ・ハ,416条1項1号ロ・ホ)は,以下のとおりです。 監査等委員会設置会社については,⑪,⑬,⑭,⑱の監査役が監査等委員会,⑮の監査役に報告をするための体制が監査等委員会に報告をするための体制,⑰の監査役が監査等委員と読み替えることになります。
三委員会設置会社については,①,②,④,⑫の取締役が執行役,⑪,⑬,⑭,⑱の監査役が監査委員会,⑮の監査役に報告をするための体制が監査委員会に報告をするための体制,⑰の監査役が監査等委員と読み替えることになります。

  • ① 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • ② 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に対する体制
  • ③ 損失の危険の管理に関する規定その他の体制
  • ④ 取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • ⑤ 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • ⑥ 当該株式会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を保するための体制
  • ⑦ 子会社の取締役等の職務の執行に係る事項の当該株式会社へ報告に関する体制
  • ⑧ 子会社の損失の危機の管理に関する規定その他の体制
  • ⑨ 子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われていることを確保するための体制
  • ⑩ 子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法定及び定款に適合することを確保するための体制
  • ⑪ 監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
  • ⑫ 使用人の取締役からの独立性に関する事項
  • ⑬ 監査役のその職務を補助すべき使用人に対する指示の実行性の確保に関する事項
  • ⑭ 取締役及び会計参与並びに使用人が監査役に報告をするための体制
  • ⑮ 子会社の取締役,会計参与,監査役,執行役,業務を執行する社員,法598条1項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が監査役に報告をするための体制
  • ⑯ 報告した者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制
  • ⑰ 監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項
  • ⑱ その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

以上を分類すると,①,③,⑤は取締役会による監督の実効性を担保するもの(⑥,⑦,⑧,⑩は関連会社を対象とした監督),②,⑪ないし⑱は,取締役の業務執行(当該取締役の命令の下で業務を執行する使用人の業務を含む)に対する監査の実効性を担保するもの,④(⑨は子会社)は,取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するものとなります。

ところで,取締役会において決議すべき事項は,業務の適正を確保するための「体制そのもの」ではなく,その「体制の整備」であり,①目標の設定,②目標達成のために必要な内部組織及びその権限,③内部組織の連絡方法,④是正すべき事実が生じ場合の是正方法等に関する重要な事項(要綱・大綱)であるとされています(「論点解説・新会社法」相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著・商事法務334頁)。

すなわち,取締役会において,具体的な内部統制システムの構築を求めているのではなく,内部統制システムの要綱・大綱を定めることを求めているのです。

そして,取締役会の決議に基づいて,担当取締役の指示・命令で稼働する使用人が具体的な内部統制システムを策定していくということが予定されているわけです。

なお,前記した各項目は,取締役会において,個別にそれぞれの内容の決定または決議を行う必要がありません。
各項目に対応する内容が,結果的に不足なく含まれていればよいのであって,関連する複数の事項を適宜まとめて決定,決議することが認められています。

例えば,職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制につき,取締役と使用人についてまとめる,損失の危機の管理に関する規定その他の体制,取締役等の職務の執行が効率的に行われていることを確保するための体制,取締役等及び使用人の職務の執行が法定及び定款に適合することを確保するための体制については,当該会社に関するものと子会社に関するものとをまとめる,監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項と使用人の取締役からの独立性に関する事項をまとめる等が考えられます。

大阪地判平成12年9月20日においては,「取締役は,取締役会の構成員として,また,代表取締役又は業務担当取締役として,リスク管理体制を構築すべき義務負い,さらに,代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負う」と判示されています。

ですので,取締役会が内部統制システムの体制の整備につき決議を行ったが,現実に内部統制システムを策定しなかった場合,法362条4項6号,399条の13第1項1号ロ・ハ,416条1項1号ロ・ホに定める義務は履行したことになりますが,善管注意義務(法330条)を履行したことにはならないということになり,結果として損害賠償責任を負うことになります。

内部統制システムの構築

内部統制システムは,それぞれの会社の経営理念を実現する手段であることから,経営理念が明確に定められていない限り内部統制システムを構築することはできません。

内部統制システムを構成するコンプライアンス体制,リスク管理体制,情報管理体制,効率的な業務執行を実現する体制,子会社の管理に関する体制,監査役を支援する体制等は,全て,会社の経営理念を実現することに向けられているわけです。

内部統制システムの中核は,リスクを回避するための体制,発生したリスクの管理体制にあります。
なお,リスク管理は,①事業を行う上で直面する可能性があるリスクの分析,②それぞれのリスクの発生可能性・頻度,③リスク発生時の事業に対する影響の分析・評価,④リスク管理の優先順付,⑤それぞれのリスク対する対応(完全回避・許容範囲まで低減・許容)の区分,⑥対応の手順を,あらかじめ定めておくという作業が求められますので,想像力が問われることになります。

ただし,内部統制システムは,少なくとも上場会社との関係では,リスク回避やリスク管理といった後ろ向きの体制に留まらず,サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題へ積極的・能動的に取組むための体制,経営陣による健全な企業家精神に基づく迅速・果断な意思決定を支援し,適切なリスクテイクを支える体制等も含まれることは,既に説明をしたとおりです。

内部統制システムの改善

内部統制システムは,一度,構築すればそれで終了するもののではなく,運用の中で問題点があれば改善するということを繰り返さなければならず,内部体制システムの構築に終わりはありません。

この点,東京地判平成16年12月16日においては,「会社の業務執行を全般的に統括する責務を負う代表取締役や個別取引報告書を確認し事後チェックの任務を有する経理担当の取締役については,デリバティブ取引が会社の定めたリスク管理の方針,管理体制に沿って実施されているかどうか等を監視する責務を負うものである」と判示されており,取締役は,他の取締役が内部統制システムに基づいて業務を執行しているか否かの確認を行う義務が認められています。

そして,基本方針の決議の内容,当該体制の運用状況の概要は,事業報告記載事項となっています(規則118条2号)。規則においては,記載すべき項目が具体的に示されていないため,それぞれの会社の状況に応じて記載することになります。この点,単に「当該『業務の適正を確保するための体制』に則った運用をしている。」という記載では「運用状況の概要」を記載したとは言えないと考えられています。

なお,「運用」の具体例として,内部統制に関する委員会の開催状況や社内研修の実施状況,内部統制・内部監査部門の活動状況等が挙げられます(会社法施行規則等の一部を改正する省令の解説〔Ⅱ〕)。
また,「当該体制の運用状況」の記載は,客観的な運用状況を意味するのであって,運用状況の評価を記載することまでを求めるものではありません。評価の記載を禁止するという趣旨ではありません。

取締役は,計算書類と事業報告を定時株主総会に提出・提供し,その内容を報告しなければなりません(法438条1項,3項)。 取締役会設置会社においては,定時株主総会の招集通知の際に,計算書類・事業補酷暑が提供されるので(法437条,規則133条),株主総会の際に,改めて株主に配布する必要はありません。

そして,監査役は,基本方針の決議の内容が事業報告において適切に開示されているか,決議の内容が当該会社の業務の適正を確保するためのものとして適切であるか,運用状況が適切に開示されているか,決議された内容を実現するための適切な運用が行われているか(規則118条2号)につき監査を行うことになっており,内部統制システムそのものが監査の対象になっています。
また,監査役は,その内容が相当でないときは,監査報告にその旨及び理由を記載することになります(規則129条1項5号,130条2項2号,131条1項2号)。

監査役から,理由を付して相当でない旨の意見が付されたにもかかわらず,これを放置した場合には取締役の善管注意義務違反が認められる可能性が高くなりますので,取締役としては,不相当の意見が付された場合には,内部統制システムの改善を行うことになります。

事業報告に「当該体制の運用状況」の概要の記載を求めている理由は,前記した裁判例を前提に,監査役による不相当の意見を契機に,あるいは不相当の意見が付されなくとも当該記載を行うこと自体が契機になって,自発的に,構築された内部統制システムを改めて評価し,改善点がある場合には改善を施していくという作業を行うことが期待されているからであるといえるのです。

なお,コーポレートガバナンスコード(CGコード)においては,取締役会は,取締役会全体として実効性に関する分析,評価を行うことなどにより,その職務の向上性を図るべきである(原則4?11)とされ,取締役会は,毎年,各取締役の自己評価なども参考にしつつ,取締役会全体の実効性について分析・評価を行い,その結果の概要を開示すべきである(補充原則4?11?)とされていますが,事業報告に「当該体制の運用状況」の概要について記載を求めている理由を前提にすると,ここでは,内部統制システムの分析・評価も対象に含まれるものと考えておくべきです。

内部統制システムのレベル

内部統制システムのレベルにつき,どの程度のものが求められているのかについては,構築時だけでなく,運用時においても常に悩まされる問題であると思います。

大阪地判平成12年9月20日においては,「どのような内容のリスク管理体制を整備すべきかは経営判断の問題であり,会社経営の専門家である取締役に広い裁量が与えられていることに留意しなければならない」とされ,東京高判平成20年5月21日においても,「デリバティブ取引から生ずるリスク管理の方針及び管理体制をどのようなものにするかについては,当該会社の規模,経営状態,事業内容,デリバティブ取引における資金運用の目的,投入される資金の性質,量等の諸般の事情に左右されるもので,その内容は一義的に定まるようなものではないのであり,そこには幅広い裁量がある」とされています。

以上の裁判例を前提として,基本的に,内部統制システムの構築そのものに経営判断の原則が及び,内部統制システムの内容には広範な裁量が及ぶと考えられています。

ただし,当該会社の規模,経営状態,事業内容等や,同種・同規模の他社の内部統制システムの内容を前提に,著しく不合理な内容の内部統制システムになっている場合には,内部統制システムが構築されていないに等しいと評価されることになるでしょうから,取締役の善管注意義務違反が認められることになると思います。

また,一定の体制を構築することが社会的な共通認識となっている事項においては取締役の裁量の範囲は限定的になるといわれています(「内部統制―会社法と金融商品取引法」浜口厚子=鈴木克昌=児島幸良90頁)。

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