保佐人の権限
保佐人は,以下に列挙した行為について,本人が一人で適切に判断して行うことに不安があり,常に他人の援助が必要である場合に付されるため,以下に列挙した行為につき同意権が与えられています。
- 元本を領収し,又は利用すること
- 借財又は保証をすること
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
- 訴訟行為をすること
- 贈与,和解又は仲裁合意をすること
- 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること
- 贈与の申込みを拒絶し,遺贈を放棄し,負担付贈与の申込みを承諾し,又は負担付遺贈を承認すること
- 新築,改築,増築又は大修繕をすること
- 土地については5年,建物については3年,動産については6か月の期間を超える賃貸借をすること
また,上記した行為以外の行為についても,常に他人の援助が必要である行為については,別途,申し立てることにより同意が必要な行為であると定めることができます。
さらに,保佐人は,成年後見人のように当然には代理権を有していませんが,本人の同意がある場合に,別途,申し立てることにより特定の行為につき代理権を付与することができます。
保佐人は,代理権を付与された場合,付与された代理権の範囲で本人の代理することになります。
保佐人の代理権が本人の住居の管理であり,本人が住居として使用している不動産を処分する場合には,家庭裁判所の許可を得る必要があり,本人が施設に入所する必要があり,住居を処分しなければ費用を捻出することができないなどの事情がない限り,家庭裁判所が許可を与えることはありません。なお,住居として使用している建物の賃貸借契約を解除する場合にも家庭裁判所の許可が必要になります。
また,本人と保佐人との間で利益相反行為を行う場合には,本人に特別代理人を付して行う必要があります。
代理権を有する保佐人は,同意を要する行為,保佐人に代理権が付与された行為を本人が行い,本人に不利益であると判断した場合には,本人の行為を取り消すことができます。
保佐人の職務
保佐人の職務は,本人が前記した行為(同意の範囲を拡張している場合には拡張した行為を含む。)を行うにあたり,本人が行うことにつき同意するか否かの判断を行うところにあります。なお,本人の利益になるにも関わらず,保佐人が同意を与えない場合,家庭裁判所は,保佐人に代わって同意を与えることがあります。
そして,特定の行為について,保佐人に代理権が与えられている場合,代理権が付与された範囲において,本人のために身上監護と財産管理を行わなければなりません。
身上監護とは,本人の生活の維持や医療,介護などの身上の保護に関する法律行為を行うことです。具体的には,介護サービス契約,施設入所契約,医療,教育に関する契約の選定とその締結,解除,これらの契約に基づく費用の支払い,契約の履行状況の確認,その他の契約締結にまつわり発生する事実行為全般のことを指します。
他方,財産管理とは,本人の財産全体の把握し,その財産を保存したり,一定の範囲で本人のために利用することを指します。
以上のとおり,保佐人であっても,代理権が付与された場合,その範囲の事項に関しては,成年後見人と同等の責任を負うことになりますので,その責任は重大といえます。