企業再編支援
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企業再編の手続(会社分割)

会社分割の手続

会社分割手続は、吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成に始まり、効力発生日後6か月間の事後開示で終わる一連の行為からなる手続です。会社分割手続には、多数の利害関係者が関与し、各手続の瑕疵は会社分割無効の原因となるため、会社分割手続の実行に当たっては細心の注意が必要になります。kaisya_bunkatsu.gif

【吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成】

吸収分割においては、当事会社は吸収分割契約を締結しなければなりません(会社法757条)。吸収分割契約の締結は重要な業務執行に当たるのが通常ですので、取締役会設置会社においては取締役会決議が必要です(会社法362条4項)。各当事会社においては、取締役会設置会社以外の場合には取締役の過半数の決定により(会社法348条2項)、取締役会設置会社の場合には取締役会決議を経て、代表取締役が吸収分割契約を締結します。ただし、委員会設置会社が簡易分割や略式分割を実施する場合は、取締役会決議により、吸収分割契約及び新設分割計画の内容の決定について執行役に委任することができます(416条4項17号かっこ書・18号かっこ書)。
新設分割においても、吸収分割と同様に新設分割計画の作成が求められます(会社法762条)。

【事前開示】

会社分割は当事会社の株主及び債権者に重大な影響を与えることから、株主及び債権者の判断に資するため、所定の書類を事前に開示することが要求されています。
吸収分割の場合、吸収分割会社は吸収分割契約備置開始日から、吸収分割の効力発生日後6か月を経過する日までの間、吸収分割契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法787条2項、会社規則183条)。
一方、新設分割の場合、新設分割会社は新設分割計画備置開始日から、新設分割設立会社成立の日後6か月を経過する日までの間、新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法803条1項、会社規則205条)。
吸収分割承継会社の場合も、吸収分割契約備置開始日から、効力発生日後6か月を経過する日までの間、同様の開示が求められますが(会社法794条、会社規則192条)、新設分割設立会社については、事後開示のみで足ります。

【吸収分割契約又は新設分割計画の承認決議】

吸収分割においては、吸収分割会社及び吸収分割承継会社は効力発生日の前日までに、株主総会で吸収分割契約の承認を得る必要があります(会社法783条1項、795条1項)。
新設分割においては、新設分割会社は株主総会の決議によって、新設分割計画の承認を得る必要があります(会社法804条1項)。一方、新設分割設立会社については、新設分割設立会社が成立することが効力発生の前提となりますので、新設分割設立会社の「成立の日」すなわち設立登記の日をもって、新設分割会社の権利義務を承継することになります(会社法49条、764条1項)。
また、株主総会の決議は原則として特別決議を必要とします(会社法309条2項12号)。

【株主の株式買取請求】

会社分割が承認されれば、反対株主は会社分割を阻止することができませんが、反対株主は会社に対して公正な価格で、自己の有する株式の買取を請求することができます(会社法785条1項、797条1項、806条1項)。

【新株予約権者の新株予約権買取請求】

株主の株式買取請求と同様に、分割会社の新株予約権の新株予約権者は、分割会社に対して、自己の有する新株予約権を公正な価格で買取ることを請求することができます(会社法787条1項、808条1項)。

【債権者保護手続】

会社債権者は、債務者である分割当事会社の分割条件によっては不利益を受けるおそれがあります。そこで、分割当事会社は、(1)会社分割をする旨、(2)承継会社又は分割会社の商号及び住所、(3)分割会社及び承継会社の計算書類に関する事項、(4)債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報で公告し、かつ、知れている債権者には、各別に催告をしなければなりません(会社法789条2項、799条2項、810条2項)。
また、会社分割においては、労働者の権利を保護するため、一定の条件を満たす労働者や労働組合に対して通知することを義務づけています。

【新株予約権証券提出手続】

分割会社が新株予約権証券を発行している場合で、分割対価として吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の新株予約権を交付する場合、分割の効力発生日までに新株予約権証券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ、当該新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には、個別に通知しなければなりません(会社法293条1項4号・5号)。

【事後開示】

吸収分割の場合、吸収分割会社は吸収分割承継会社と共同して、吸収分割承継会社が承継した吸収分割会社の権利義務その他の吸収分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、効力発生後遅滞なく作成するとともに、効力発生日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法791条1項1号・2項・3項1号、会社規則201条)。
新設分割の場合、新設分割会社は新設分割設立会社と共同して、新設分割設立会社が承継した新設分割会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、その成立の日後遅滞なく作成するとともに、新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録とあわせて、その成立の日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法811条1項1号、2項、会社規則209条)。
新設分割設立会社も同様の作成及び開示が求められます(会社法815条2項、3項1号、会社規則212条)。

【会社分割登記】

吸収分割及び新設分割のいずれの場合も、会社分割当事会社の本店所在地において会社分割登記が必要になります(会社法923条、924条)。

【公正取引委員会等への届出】

会社分割には、独占禁止法による公正取引委員会への届出や、金融商品取引法による財務局長への届出が必要な場合があります。また、上場会社が会社分割決議を行った場合は、金融商品取引所への届出も必要になります。さらに、公益的要素の強い事業を営む会社については、事業法(銀行法第30条、保険業法第173条の6、鉄道事業法第26条等)に従い、監督官庁(主務大臣)が許認可を通じて会社分割を規制していることに注意する必要があります。

簡易分割・略式分割

吸収合併の存続会社について簡易合併があるように、会社分割についても、分割会社または承継会社の株主に及ぼす影響が軽微なものについては、その会社の株主総会の承認決議なしに分割を行うことが認められています(簡易分割)。   
また、吸収分割の一方の当事者会社が他方の特別支配会社である場合には、略式合併と同様に、従属会社である当事会社における株主総会の分割承認決議は要求されません。

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