事業再生支援 私的整理
事業再生支援 私的整理

事業再生の手法(総論)

過剰債務を圧縮するツールとしての事業再生の手法ですが、大きく分けて、私的整理と法的整理の二種類に分かれます。

私的整理とは、再生企業において、合理的な再建計画を作成して債権者と交渉し、個別に債権カットの同意を得ることで過剰債務を圧縮していく手法です。これに対し、法的整理は、個別の債権者の同意ではなく、裁判所の監督の下、債権者の多数決によって、法律に基づき、債権のカットを受ける手法です。

私的整理、法的整理には、それぞれメリット・デメリットがありますので、再生を目的とする企業の状況に合わせて、いずれの手法によるべきか検討することになります。

私的整理の特徴・メリット・デメリット

私的整理は、基本的には個別交渉による債権カットであり、通常、金融機関等が主導して行うことになります。

金融機関等による任意の債権放棄により、過剰債務を返済可能な程度にまで圧縮し、これによって生じる債務免除益によって資本の欠損を解消し、残債務を分割弁済とすることによって企業の再建を図ることになります。

st112.jpgこのため私的整理の対象となる債務は、通常、金融機関等が有する貸付債権に限られ、一般商取引債権者に対する買掛金債務等は対象から除外されるので、私的整理の場合、連鎖倒産が起きる可能性が少なく、金融機関側にとっても、予想外の損失発生という事態に陥らずに済むといった利点があります。

法的整理を行うこととなると、一般に「倒産」というイメージがつきまとい、世間的にも信用を失う危険が高い上、一般商取引債権者を巻き込むこととなり、信用力・企業価値を毀損する程度も大きいと言えます。

むしろ収益力が相当程度あり、バランスシートの痛みが比較的軽い企業であれば、私的整理を選択することにより、信用力・企業価値を維持しながら、事業を再建することも可能となります。

私的整理にあたっては、通常、資金面、人材面、取引面において、メインバンクの全面的支援がなされる一方、経営陣の退陣等による経営責任の明確化がなされ、不採算部門の閉鎖、子会社・関係会社の整理等のリストラ・事業再編が実施されることになります。
近時は、債権放棄に代えて、DESやDDSが活用されるケースが増加しています。

私的整理の最大のメリットは、企業価値の維持にあります。上述したとおり、法的整理には「倒産」としての相当なマイナスイメージがつきまといます。仕入先や消費者によって営業が支えられている小売業や、ブランドイメージの毀損が売上の減少に直結する企業にとって、法的整理は、回復不可能な事業価値の劣化を招く危険があります。

一般商取引債権者を巻き込む法的整理と異なり、私的整理は少数の金融機関によってスキームが策定・実行されるため、一般商取引債権者に直接の影響はありませんし、「倒産」と呼称されないため、ブランドイメージの毀損の程度は比較的小さいと言えます。

私的整理はあくまでも合意を基礎に債務の圧縮を進めるものですので、関係者の合意により柔軟な再建計画を策定できる点も私的整理のメリットです。

一方、私的整理による場合は、一般商取引債権者に対する債務が債権カットの対象でない上、次に述べるとおり債権放棄の額自体が低額とならざるを得ないという事情があります。

すなわち、税務上、損金計上が認められるのは、対象企業再建のために必要最低限度の債権放棄だけであり、これを超える債権放棄については寄付金課税の対象となりかねないという、税務上の損金計上の問題がまず挙げられます。次に、残債務の弁済期間が長期化するため、そのリスクを見込んだ放棄額となってしまう点が挙げられます。更に、みだりに債権放棄を行うとなると、善管注意義務違反による株主代表訴訟のリスクも生じます。

これらの事情から、私的整理における債務の圧縮額は、法的整理と比較すれば、どうしても小さくならざるを得ず、この点は、私的整理のデメリットとなります。

また私的整理は、あくまでも関係金融機関の合意をベースとする以上、合意が得られなければ成立困難であるところ、必ずしも全関係者の合意を取り付けることが容易ではない点もデメリットです。

このとおり、私的整理は、一見、債権を放棄するだけと簡単なようですが、現実には、関係当事者間において、非常に難しい調整が必要となってきます。

このため、私的整理ガイドラインが整備される一方、整理回収機構や中小企業再生支援協議会といった公的機関が私的整理を側面から支援する体制が生まれています。

法的整理の特徴・メリット・デメリット

私的整理にチャレンジしたにもかかわらず、債権者間で意見が対立するなど再建計画について支持が得られない場合、再生企業に対する金融支援が打ち切られ、再生企業としては、法的整理手続を選択せざるを得ないことになります。

この法的整理手続は、会社の清算を目的とする清算型手続(破産・特別清算)と、企業・事業の再建を主たる目的とする再建型手続(民事再生・会社更生)とに分けられます。

法的整理手続の最大のメリットは、

  1. 多数決原理によって、
  2. 債務超過を解消するだけの十分な債務削減が可能となり、抜本的にバランスシートを健全化できる点

です。

一方法的整理手続のデメリットは、

  1. 債権者平等の制約から、一般商取引債権者の債権についてもカットの対象となり、取引先から取引の継続が拒絶され得る、
  2. 「倒産」手続に入ったというマイナスイメージによる顧客離れ、
  3. 信用不安による短期的な損益計算の悪化が挙げられます。
  4. また、連帯保証人に責任追及が及ぶため、場合によっては連帯保証人についても法的整理を行わなければならない可能性がある点

も、デメリットと言えるでしょう。

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