公開買付けの撤回
公開買付けの撤回は自由に行うことができず、金融商品取引法に定められた事由がなければ撤回することができません(金商品取引法27条の11第1項)。
法定の撤回事由には、公開買付開始公告及び公開買付届出書に撤回をする条件(特段条件)を記載していた場合に撤回事由となるものと、特段条件として明記していなくとも撤回事由となるものがあります。
公開買付者が公開買付の撤回を行うときは、公開買付期間の末日までに、当該公開買付けの撤回を行うこと、その理由等を公告し(金商品取引法27条の11第1項)、その日のうちに撤回等の理由、有価証券等の返還方法等(公開買付府令27条)を記載した公開買付撤回届出書を提出しなければなりません。
決定事項
対象者またはその子会社(会社法第2条第3号に規定する子会社)の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたことを撤回の条件にした場合、対象会社またはその子会社がかかる決定を行った場合、撤回することができます。 ただし、子会社については、純資産ベースで対象会社の10%未満等の場合には撤回することができません(軽微基準)。
- 公開買付府令26条1項
- 株式交換
- 株式移転
- 会社の分割
- 合併
- 解散(合併による解散を除く。)
- 破産手続開始、再生手続開始または更生手続開始の申立て
- 資本金の額の減少
- 事業の全部または一部の譲渡、譲受け、休止または廃止
- 金融商品取引所に対する株券等の上場の廃止に係る申請
- 認可金融商品取引業協会に対する株券等の登録の取消しに係る申請
- 預金保険法第74条第5項の規定による申出
- 株式または投資口の分割
- 株式または新株予約権の割当て(新たに払込みをさせないで行うものに限る。)
- 株式、新株予約権、新株予約権付社債または投資口の発行(?および?以外)
- 自己株式(会社法第113条第4項に規定する自己株式をいう。)の処分(?以外)
- 既に発行されている株式について、会社法第108条第1項第8号または第9号に掲げる事項について異なる定めをすること
- 重要な財産の処分または譲渡
- 多額の借財
- 1から18までに掲げる事項に準ずる事項で公開買付者が公開買付開始公告および公開買付届出書において指定したもの
公開買付府令26条2項
- 公開買付開始公告日に、対象者の業務執行を決定する機関が当該公開買付けの後に当該公開買付者の株券等所有割合を内閣府令で定める割合以上減少させることとなる新株の発行その他の行為(当該公開買付けに係る買付け等の期間の末日後に行うものに限る。)を行うことがある旨の決定を既に行っており、かつ、当該決定の内容を公表している場合、当該決定を維持する旨の決定
- 公開買付開始公告をした日において、対象者またはその子会社が会社法第108条第1項第8号または第9号に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式に係る株券等を発行している場合、当該異なる定めを変更しない旨の決定
発生事実
対象者に次に掲げる事実が発生した場合(公開買付開始公告を行った日以後に発生した場合に限る。)には、撤回の条件としたか否かを問わず撤回することができます(施行令14条1項3号)。 ただし、1、3、5及び7については、公開買付者およびその特別関係者によって行われた場合は除きます。また、1から9に準ずる事実で公開買付者が公開買付開始公告および公開買付届出書において指定したものについても撤回事由となります。
- 事業の差止めその他これに準ずる処分を求める仮処分命令の申立てがなされたこと
- 免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分がなされたこと
- 当該対象者以外の者による破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始または企業担保権の実行の申立てまたは通告がなされたこと
- 手形もしくは小切手の不渡り(支払資金の不足を事由とするものに限る。)または手形交換所による取引停止処分があったこと
- 主要取引先(前事業年度における売上高または仕入高が売上高の総額または仕入高の総額の百分の十以上である取引先をいう。)から取引の停止を受けたこと。
- 災害に起因する損害
- 財産権上の請求に係る訴えが提起されたこと
- 株券の上場の廃止(当該株券を上場しているすべての金融商品取引所において上場が廃止された場合に限る。)
- 株券の登録の取消し(当該株券を登録しているすべての認可金融商品取引業協会において登録が取り消された場合(当該株券が上場されたことによる場合を除く。)に限る。)
行政庁の許認可が得られなかった場合
株券等の取得につき他の法令に基づく行政庁の許可、認可、承認その他これらに類するものを必要とする場合において、公開買付期間の末日の前日までに、当該許可等を得られなかったこと(施行令14条1項4号)
内閣府令で定めるもの
公開買付けの後において公開買付者及びその特別関係者が株主総会において議決権を行使することができる事項を変更させることとなる株式の交付その他の行為(当該公開買付けに係る買付け等の期間の末日後に行うものに限る)を行うことがある旨の決定を対象者の業務執行を決定する機関が行っており、かつ、当該決定の内容を公表している場合であって、当該機関が当該決定を維持する旨の決定(公開買付開始公告を行った日以降に公表されたものに限る)をした場合(施行令14条1項5号)。
公開買付者側の事由
公開買付者に、次に定める事由が発生した場合には、条件に明記していなくとも撤回することができます。
- 死亡
- 後見開始の審判を受けたこと
- 解散
- 破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は厚生手続開始の決定を受けたこと
- 当該公開買付者及びその特別関係者以外の者による破産手続開始、再生手続開始、更正手続会社又は企業担保権の実行の申立又は通告がなされたこと
- 不渡り等があったこと