本稿では、新聞紙上を頻繁に賑わしているM&Aが、一体、どのような目的で行われているのかを説明したいと思います。
さて一口にM&Aが行われる目的と言いましても、そこには実に様々な目的が存在します。
そこでまずこれを大きく分けますと、大企業同士で行われるものと中小企業が対象となるものとの間では、その目的が自ずと異なることとが分かってきます。
大企業同士のM&Aの目的において、よく言われるのが、国際的な競争力をつけるための合従連衡というキーワードです。
近年、自動車業界や鉄鋼業界においては国際的な競争が激化しており、国際的な企業再編が進んでいます。
また銀行業界もかつて13行あった都市銀行はメガと呼ばれる4行に集約されておりますし、大手商社においても特定の事業部門を競業他社と統合するということが行われてきました。
新薬開発に莫大な費用が必要になる製薬会社においても国際競争力をつけるための合従連衡が行われています。
食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスも過去には経営統合の交渉を進めている時期がありました。
仮に、これが実現しておれば、統合後企業グループは、ビールと清涼飲料で国内首位に浮上し、世界でも最大級の酒類・飲料メーカーとなり、国内市場の収益基盤を強化し、成長が見込まれる海外市場を共同開拓することで世界的な勝ち残りを目指すと言われていました。
このように国際的な競争力をつけるための合従連衡は、大企業同士のM&Aの目的として、最もよく言われるキーワードの一つですが、今後も、このような内需の有力企業同士が手を取り合い、グローバルな市場での成長を求める形での再編が多くなることが予想されています。
弁護士 久保陽一