労務
労務

集団的労使関係

ここまでの記載は、(元)労働者個人との紛争問題ですが、事案数は減少傾向ですが、いまだに、使用者と労働組合との紛争も少なくありません。

団体交渉

(1)定義:労働組合が使用者と労働者の待遇または労使関係上のルールについて合意を達成することを主たる目的として交渉を行うこと

(2)団体交渉の対象事項
→いかなる事項について団交を拒否した場合に不当労働行為になるか

義務的団交事項:労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの

任意的団交事項:それ以外すべて
団交応諾義務、誠実公正義務→合意すべき義務ではない

組合活動

roushikankei.jpg(1)定義:組合等が行う行動のうち、争議行為及び団体交渉以外のもの
(EX.ビラ貼り、ビラ配り、リボン戦術、集会活動、教宣活動等)

(2)組合活動の正当性判断基準
憲法上の権利 × 労務提供義務、職務専念義務、企業秩序維持義務、使用者の施設管理権

(3)ビラ貼り
→労働組合等が使用者の意思に反して、組合掲示板等の所定の場所とは異なる企業施設にビラ貼りを行った場合(撤去要求、自力執行、仮処分、刑事告訴、懲戒処分、損賠請求等)

(4)ビラ配り
→労働組合等が使用者の意思に反して、企業施設内外でビラ配りをした場合(仮処分、差止請求、懲戒処分、刑事告訴、損賠請求等)

(5)集会
→労働組合等が使用者の許可なく企業施設を利用して職場集会を行う場合(解散、退去通告、就労命令、懲戒処分、仮処分等)

(6)リボン戦術
→労働組合の指令により、組合員が就業時間中に「要求貫徹」等のスローガンを掲げたリボン、鉢巻、ワッペン、腕章、ゼッケン等や組合バッジを着用したまま勤務する場合(取外命令、配置換え、懲戒処分、就労拒否、査定反映、仮処分等)

(7)教宣活動
→労働組合等が、企業内や街頭、取引先等に押しかけて、抗議行動、要請行動、説得活動を行う場合(刑事告訴、懲戒処分、賃金カット、損賠請求、差止請求、仮処分等)

争議行為

(1)定義:労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為で、業務の正常な運営を阻害するもの

(2)正当性判断基準
労働者の労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的とするものであって、使用者において法律的ないし事実的に処理しうる事項に属するものであることを前提に、?主体、?目的、?開始時期・手続き、?態様の側面から総合的に判断する

(3)ストライキ(同盟罷業)

(4)ピケッティング
→ストの参加者が、組合員の脱落防止、スト破りの雇入れ阻止、原材料の入荷・製品の出荷の阻止、顧客等の出入り阻止を主たる目的として、職場付近で見張りをし、組合員及び使用者、非組合員、顧客らの第三者に対して、就労あるいは取引を断念するよう働きかける戦術

(5)職場占拠
→スト中に代替要員等による操業を妨害する等の目的で、組合員を会社の施設内に滞留させる戦術、運輸関係企業において、車両やキーを組合が管理する戦術等

(6)残業・休日拒否闘争、一斉休暇闘争
→争議行為になる場合とそうでない場合がある

(7)使用者の対抗手段
操業継続、ロックアウト、賃金カット、懲戒処分、仮処分、損害賠償等
ロックアウト:使用者が、労働争議の相手方たる労働者に対して、労務の集団的受領拒否、事業場からの集団的締出、退去要求等をすること
→いかなる場合に正当なロックアウトとして賃金支払義務を免れるかが問題

不当労働行為

(1)不当労働行為の類型(労組法7条)

  1. 労働者が労働組合の組合員であることや正当な組合活動をしたことを理由に、解雇その他の不利益取り扱いをすること(不利益取扱い)
  2. 労働者が労働組合に加入しないこと若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること(黄犬契約)
  3. 正当な理由なく団交を拒否すること(団交拒否)
  4. 組合の結成や運営を支配し、介入すること(支配介入)
  5. 労働委員会に対して申立等をしたことを理由に不利益取扱いをすること

(2)不利益取扱い

  1. 「正当な」組合活動が、不当労働行為の対象となる。「正当性」が問題となる。
  2. 故意の存在:就業規則違反の非違行為があるが、不当労働行為意思もある場合、両者の動機を比較して不当労働行為意思が不利益処分の決定的動機となっているかどうか(決定的動機説)

(3)団交拒否

  1. 「正当な理由なく」団交を拒否すると、不当労働行為の対象となる。「正当な理由」が問題となる。
  2. 誠実交渉義務

(4)支配介入

  1. 支配介入の意思(学説、判例とも争いあり):実務では、支配介入と評価される行為をなそうとの意思(認識、意欲)までは必要でないが、周辺事実の組み合わせから反組合的行為の意思は必要と解する考えが有力
  2. 類型・態様:組合結成に対する非難、組合結成中心人物の解雇、配転、従業員への脱退や不加入勧告や働きかけ、正当な組合活動に対する妨害行為、組合幹部の懐柔を目的とした買収、供応、組合会合の監視、批判派への援助、別組合の結成援助・優遇、組合のあり方についての使用者の意見表明、組合集会のために施設利用を許可しない、その他妨害行為、経費援助(組合専従者の給与、組合用務の諸経費や出張費用の会社負担)等

以上のような集団的労使関係に関する紛争は、国鉄がJRに民営化された頃、高度経済成長期によくみられた紛争ですが、現在では、組合組織率も減少する中、減少傾向にありますが、この種の紛争に対応するためには、専門的知識が必要です。

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