労務
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解雇について

1.解雇

(1)定義

使用者の一方的な意思によって、労働契約の効力を将来に向かって終了せしめる行為

(2)種類

普通解雇
懲戒解雇(諭旨解雇)
整理解雇

(3)手続上の規制

kaiko.jpg1.30日前の解雇予告若しくは解雇予告手当が必要(労基法20条)
2.解雇理由説明書の交付(労基法22条2項)→解雇理由については、具体的に示す必要がある。「就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならない」「解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、解雇の理由を証明書に記載してはならない」(平成11年1月29日基発45号、平成15年基発1226002号)

(4)懲戒解雇

→会社の経営秩序違反に対する制裁として、懲戒処分の一種として行われる解雇

  • 退職金不支給事由となっている場合が多い
  • 手続きとして賞罰委員会等を開催して弁明の機会を設けなければならない
  • 労基署の解雇予告除外認定をとることで(労基法20条1項但書、第3項、19条2項)、予告手当てを支払わない即時解雇が可能→実際には除外認定をとることは難しい

(5)解雇の正当性(実質的解雇規制)

1.解雇権濫用法理

原則、民法上、解雇は自由なはず→労基法上、解雇は自由ではない(原則と例外が逆転)「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法16条)(労働契約法16条は、従前判例の集積を明文化した労基法18条2(平成15年改正法)を改めて法制化したもの)

日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日判決、民集29巻4号456頁)
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」

高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日判決、労判268号17頁)
「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になるものというべきである。」

2.解雇権の濫用とされる類型

(ア)解雇の動機が不法、不当な場合
→解雇が労働者の思想や私生活等を理由としたり、不当労働行為による場合
(イ)解雇手続に違反する場合
→労働協約において、解雇等について組合との事前協議等を要するとの規定がある場合に、事前協議等をしない場合
(ウ)解雇の相当性を欠く場合
→解雇の結果が、当該労働者にとって酷にすぎる場合

3.代表判例

勤務成績不良による解雇

「長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、労働者に不利益が大きいこと、それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。」
→解雇を無効と判断
(エース損保事件、東京地裁平成13年8月10日決定、労判820号74頁)

労働能力喪失による解雇

「上告人は、被上告人に雇用されて以来二一年以上にわたり建築工事現場における現場監督業務に従事してきたものであるが、労働契約上その職種や業務内容が現場監督業務に限定されていたとは認定されておらず、また、上告人提出の病状説明書の記載に誇張がみられるとしても、本件自宅治療命令を受けた当時、事務作業に係る労務の提供は可能であり、かつ、その提供を申し出ていたというべきである。そうすると、右事実から直ちに上告人が債務の本旨に従った労務の提供をしなかったものと断定することはできず、上告人の能力、経験、地位、被上告人の規模、業種、被上告人における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして上告人が配置される現実的可能性があると認められる業務が他にあったかどうかを検討すべきである。」
→配転検討義務を認め、原審を破棄、差し戻し
(片山組事件、最高裁平成10年4月9日判決、労判736号15頁)

4.解雇についての立証責任

解雇理由の存在、解雇権の行使が濫用にならないことについて、使用者側が立証しなければならない
「濫用がないこと」の立証は、実務上、重大な作業である

(6)雇い止め

契約期間満了による契約の終了(打ち切り)
→ 解雇濫用法理の類推適用
東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日判決、民集28巻5号927頁)→肯定
日立メディコ事件(最高裁昭和61年12月4日判決、労判486号6頁)→否定

これらの判例を踏まえて法制度化された有期雇用の雇止めについて
→有期労働契約であっても、過去に当該有期契約が反復継続更新されており、期間の定めのない雇用契約と社会通念上、同視されるような場合、あるいは、契約更新がされると期待する合理的な理由が労働者にあるような場合に、労働者から更新の申し込みがあった場合、使用者が当該申し込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、同一の内容で更新したものとみなす(労働契約法19条)

(7)整理解雇

→企業が経営上の必要から余剰の従業員を解雇すること
通常、就業規則の解雇条項に含まれている

整理解雇の4要件

1.整理解雇の必要性
経営の事情により従業員の減員を行う必要性が客観的に認められるかどうか
→企業の存続維持が危機に瀕する程度に差し迫った必要性までは要せず、客観的に高度な経営上の必要性で足りる

2.解雇回避努力義務

配転、出向、一時帰休、賃金の切り下げや、希望退職を募るなど、解雇回避のための個別努力義務を尽くしているか

3.人選の妥当性
解雇人選に差別がないか、客観的、合理的な解雇基準に基づいているかどうか

4.説明・協議

人員整理の必要性や解雇基準について、労働者等に十分説明、協議を尽くし、納得してもらえるよう努力しているかどうか

上記4要件を総合的に考慮して、整理解雇が認められるかどうか判断される(総合考慮説)

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