知的財産
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自主的な取決め

「対価を決定するための基準」は「契約、勤務規則その他の定め」などによって定められますが、どのような方式で策定されているのかについては全く制約がなく、必ずしも承継等についての定めと同一の中で定めなければならないわけでもありません。

就業規則によって定められる場合、労働基準法第90条において、「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定されている関係で、これら過半数代表者等の意見を聴いて「基準」が策定されているものと解されます。

但し、労働基準法90条に定める「意見を聴く」ことと特許法35条4項「協議」とは別ものですから、労働基準法90条に基づいて意見を聴いたということをもって、必ずしも特許法35条4項の「協議」が行われた評価されるわけではありません。

「その他の定め」には労働協約も含まれます。

なお、労働協約の効力が及ぶのは、労働組合の代表者に対して協議を、明示的あるいは黙示的に委任している従業員に限られます。

ところで、労働協約においては、使用者と労働組合の代表者とが対等な立場で話合いが行われることが多く、35条4項の「協議の状況」に関し不合理性を否定する要因になるものといえます。
但し、労働組合法14条に規定する労働協約の効力発生要件(書面により作成し、両当事者が署名し、又は記名押印すること)が満たされていることのみで不合理性が否定されるわけではありません。

「対価を決定するための基準」は必ずしも一つである必要はなく、性質が異なる従業員の集団が存在する場合、それぞれの集団ごとに、異なる基準を策定することが認められています。また、同一の集団内であっても、発明の内容等に応じて異なる基準を策定することも可能です。

使用者が従業員から外国における特許を受ける権利を承継した場合、従業員が特許法35条に基づきその承継の対価を請求できるのかについては、判例や学説において見解が統一されていません。

仮に、外国における特許を受ける権利の承継の対価について我が国特許法35条が適用されるとすれば、その対価は、特許法35条4項又は第5項に沿って取り決められるべきものとなりますが、外国における特許を受ける権利の承継の対価について我が国特許法第35条が適用されないということになれば、その権利の承継や対価についての準拠法が適用されることになります。

このように、判例や学説における見解が統一されていない現状においては、個別の契約を締結しておくことが望ましいと考えられます。

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