知的財産
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意見の聴取の状況

特許法35条4項の「意見の聴取の状況」とは、職務発明に係る対価の額の算定について、使用者が当該職務発明の発明者である従業員から、その算定についての意見等を聴くということを意味します。

なお、特定の職務発明に係る対価の額の算定について、職務発明を行った従業員から意見が表明されなかったとしても、使用者等が当該従業員から「意見の聴取」をしたと評価できる場合があります。

「意見の聴取」の方法には特に制約はありませんので、予め従業員から意見を聴取した上で対価の額を算定するという方法、使用者等においていったん基準に基づき算定した対価を従業員に仮払いした後に、当該従業員等に対価の額の算定について意見を求め、意見が表明されればそれを聴取するという方法であっても、「意見の聴取」に該当すると評価されます。

また、特定の職務発明に係る対価の額の算定について、従業員から一々意見を求めることをしなくても、基準等により算定された対価の額について一定期間意見等を受け付ける制度が用意され、使用者等から従業員等に対して実質的に意見の聴取を求めたと評価できるようであれば、それは「意見の聴取」がなされたと評価されます。

ところで、共同発明が行われた場合における「意見の聴取の状況」は、発明者ごとに判断されますが、必ずしも共同発明者の一人一人から意見を聴取する必要はありません。
例えば、共同発明者間で意見をまとめその意見を聴取することや、共同発明者の代表者を通じそれぞれの発明者ごとの意見を聴取する方法も認められます。

但し、共同発明者の代表者を通じて意見を聴取する場合には、代表者が各共同発明者を正当に代表していることが必要となります。

また、共同発明者の中に退職者がいる場合に退職者から意見の聴取を行わなかった場合、当該退職者との関係で「意見の聴取」は行われていないこととなりますので、退職者から意見を聴取する機会を設ける、退職に際して「意見の聴取」を行っておくことが望ましいといえます。

対価を決定するための基準において、、対価の算定について行われる従業員からの「意見の聴取」を行う時期が定められている場合には、その事実も、不合理性を総合的に判断するための一要素として考慮されますし、従業員から意見を表明したい旨の申入れがあれば、その都度「意見を聴取する」という規定を設けておくことはより望ましいといえます。

使用者は、「聴取した意見」を誠実に対応する必要があり、必要に応じて再度対価の額を算定し直すことが望ましいとされています。

また、使用者と従業員の間で、対価の算定について見解の相違が生じた場合に、社内の諮問機関や外部の仲裁機関等によって調整する制度を設けておくことも一つの方法であると考えられます。

特許法35条4項の「意見の聴取の状況」は、職務発明に係る対価の額の算定について、使用者が当該職務発明の発明者である従業員から、その算定についての意見、不服などを聴くということを意味していますが、対価の額の算定について使用者と当該従業員等の間で合意が成立することまで求められていません。

仮に、意見の聴取の結果として合意に至らなかったとしても、使用者が真摯に対応している場合には「意見の聴取の状況」が十分ではないと評価されることはないと考えられています。

従業員から意見を聴取するにあたっては、使用者と従業員が対価算定の基礎となる情報を共有していることが望ましいとされています。
なお、対価の算定に用いられる資料・情報の一例として以下のものを挙げることができます。

  • 期待利益を採用する場合
  • 本件発明に係る製品の市場規模予測
  • 本件発明に係る製品の利益率予測
  • 利益に対する本件発明に係る特許権の寄与度予測
  • 実績報償を採用する場合
  • 本件発明に係る売上高に関する資料
  • ライセンス契約の概要と使用者等が受けた実施料その他の利益の内容
  • 利益に対する本件発明に係る特許権の寄与度及び寄与度の根拠

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