特許請求の範囲は作用・効果で限定されることがあります。
発明には、
- 発明の目的
- 目的を達する技術的解決原理
- 技術的解決原理を実現する技術的構成
- 当該技術的構成が実現する作用効果
が存在します。そして、明細書は、このような発明の原理に基づいて記載がなされています。
このことから、明細書や図面の記載を参考にして用語の意味を確定する場合、1. から4. までの各事項の相互関係を検討し、論理的に整合性する技術的構成が特許権の構成要件となり、用語の意味も論理的に整合するように確定しなければならないのです。
そして、発明の目的を達成するための発明の効果が高ければ高いほど、その発明には高い評価が与えられます。
つまり、発明には、作用効果の程度によりその価値が左右されるという性格があるのです。
これを逆の立場から見ますと、作用効果をもたらさない発明は、特許発明としての価値がないということになります。
これをさらに進めて考えると、作用効果をも垂らさない発明は、特許権の対象に含まれているはずがないということになります。
そして、作用効果をもたらさない発明が特許権に含まれないということを、特許請求項の解釈に当てはめると、「作用効果有しない発明は、特許請求項から除外される」ということになるのです。
仮に、特許請求項を文言どおり解釈すると以下のような技術的要素となる特許があるとします。
特許請求項 A+B+C
そして、上記した特許請求項の技術的構成として以下の二つの構成が含まれるとします。
技術的構成1 a+B+C
技術的構成2 a+B+C
このとき、技術的構成2については、明細書に記載された発明の効果が認められないとしますと、特許請求項には「A+B+C」と記載されていたとしても、特許請求項の解釈については、「a+B+C」を除いた「a+B+C」が特許請求項の範囲であると解釈されることになるのです。
訴訟において、権利者が特許請求項を解釈すれば特許の範囲は「A+B+C」であり、被疑侵害者が製造・販売している「a+B+C」はこれに含まれると主張しても、「a+B+C」については明細書に記載された 発明の作用・効果が認められない場合、被疑侵害者から「a+B+C」については権利者が意図している発明の作用・効果が認められないので特許権の範囲には含まれないという反論がされると、認められることになるのです。
これを、一般的に「作用・効果不奏効の抗弁」と言われています。
このように、特許請求項の解釈は、原則的には、記載された文言のとおり解釈するのですが、発明の性格から権利者が意図している作用効果が認められない技術については特許権の範囲から除外した解釈が行われることがあります。
大阪地裁平成12年7月27日「養鶏ケージと糞受体構造事件」判決、東京地裁平成14年10月31日「金属管内外面加工装置事件」判決、東京高裁平成15年6月26日「ゲートバルブ事件」判決がこの解釈手法を採用しています。