知的財産
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特許請求項の記載方法

特許請求項には様々な表現方法がある

特許請求に技術思想を表現する方法としていくつかの方法があります。これらを理解せず、漫然と特許請求項を見ても正確な特許権の把握は困難です。そこで、技術思想を特許請求項に表現する代表的な方法を説明します。

独立形式と引用形式

特許請求項には、他の請求項を引用しないで記載する独立形式と他の請求項を引用して記載する引用形式とがあります。

請求項1についてはaという発明について出願している場合に、
請求項2においてはa+bという発明を出願する場合、
特許請求1にbを加えた〇〇という方法で表現されたものが引用形式です。
αとβにより構成された〇〇という方法で表現されたものが独立形式です。

基本形式

特許請求項の基本的な記載方法は、「物」若しくは「方法」の構成要素を列挙し、つづいて各構成要素の特徴、構成要素相互の関係(協動関係)等を記載する方法です。機能・特性等の表現を併用する場合が多いと言えます。

オープンエンド形式

請求項に、いくつかの要素を列挙するものの、必ずしも列挙したものに限定されず、列挙したものを代表として、「含む」、「備える」、「有する」等の語句を使用して、特許請求項に記載の構成要素以外の構成要素も含み得ると解釈されるクレームのことをオープンエンド形式といいます。

このような請求項の記載方法は、列挙したもの以外にも代替しうる要素が存在する場合に代替要素を含めた特許権の取得が可能となり広範な特許権を取得することができます。
しかし、他方で出願した発明の特定性に欠ける、あるいは公知技術を含んでしまい特許権として認められないという危険性を孕んでいます。

オープンエンド形式で特許請求項を記載するときには、明細書において代替要素にどのようなものがあるのかなるべく詳細に説明する必要があると思います。
なお、あまり詳細にし過ぎますと、特許請求項の範囲が狭くなってしまいますので、オープンエンド形式をとった意味がなくなりますので注意が必要です。

クローズドエンド形式

オープンエンドとは反対に「〜からなる」〇〇という表現を使用することにより、特許請求項に記載された構成要素のみで発明が構成されると解釈される表現方法です。

塩基配列により遺伝子を特定する場合やアミノ酸配列でタンパク質を特定する場合には、特許請求項の範囲が広くなりすぎて特許請求項に記載された発明を実施することが不可能であるということになります。

そこで、特許庁の審査基準では、塩基配列により遺伝子を特定する場合やアミノ酸配列でタンパク質を特定する場合には、オープンエンド形式の特許請求項を認めておらず、クローズドエンド形式で記載するということになっています。

ジェプソン形式

特許請求項を、前提部と特徴部とを分けて記載する形式のことをいいます。
前提部には、「〜において」若しくは「〜であって」等の表現を使用して、従来から公知の部分を記載します。
そして、特徴部には、「〜を特徴とする」の表現を用いて発明の特徴部を記載します。

このジェプソン形式のクレームは、従来技術と発明の特徴部分が一目瞭然となり、発明が理解しやすいという利点をあります。

しかし、前提部分は、従来技術であると解釈されることになりますので、新規な事項を記載してもそれが従来技術であると解釈されることになりかねないので、前提部に新規事項を記載しないように注意する必要があります。
このことから、従来技術との区別が困難な場合には用いるべきではないと言えるでしょう。

マーカッシュ形式

複数の構成要素から形成されるグループの中から任意に構成要素を選択するように記載する形式のことをいいます。
例えば、「a、b、c、d、及びeからなる群から選択された一つ」というように表現します。

マーカッシュ形式で表現された複数の構成要素で構成されたグループは、明示された構成要素のみからなり、他の構成要素が含まれると解釈されることはありませんので、含みうる構成要素を漏れなく記載するという注意が必要になります。

マーカッシュ形式は、複数の構成要素を包括的に表現出来ない場合や上位概念化できない場合に有用な方法であり、医薬品の分野で汎用されている表現形式です。

ただ、マーカッシュ形式による記載が化学物質に関する場合には、請求項の明確性が問題となり、選択肢の全部について実施可能要件、開示要件を満たしているかが問題となることがあります。

特許権を行使した際に、一般的に相手方から無効原因を含む特許であるという主張がなされますが、この相手方からの反撃にも耐えうるように慎重に請求項を設定する必要があります。

機能・特性型

作用、機能、効果、性質又は特性などで発明を表現した特許請求項のことを機能・特性型特許請求項といいます。
機能等で表現した特許請求項は、文言上その機能等を有するものを全て含むから広い権利範囲となります。

このような特許請求項は、出願時の技術常識に照らしても、請求項にかかる発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない場合に該当する恐れがあり、開示要件違反になりやすい傾向があります。

また、出願時の技術常識を考慮した結果、機能・特性等を有する具体的な物を想定できない場合には、明確であるとはいえないことになります。

ただし、機能・特性等による特定以外には、出願しようとする発明を適切に特定することが出来ない場合もあり、この場合に想定できないことのみを理由に明確性違反とすれば、特許保護を全うできないということになります。

そこで、特許庁においては、特許請求項に記載した機能・特性等を有する物と、出願時の技術水準との関係が理解できるときは発明の範囲は明確であると解されるという取り扱いがされています。

さらに、特許庁においては、機能・特性型の特許請求項において、その機能・特性等が標準的なものではなく、しかも当業者に慣用されていない場合に実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、その機能・特性等の定義又はその機能・特性等を定量的に決定するための私見・測定方法を示す必要があるとされています。

プロダクト・バイ・プロセス

製造方法により「物」の発明を表現する特許請求項のことを、プロダクト・バイ・プロセスクレームと読んでいます。
構成要素で「物」の発明を表現できない場合が多い、バイオ分野で多用される傾向にあります。

プロダクト・バイ・プロセスクレームは、製造方法により発明を特定しているにもかかわらず、新規性等の特許要件の判断の際や権利解釈の判断の際には、特許請求項に記載された製造方法に限定されません。

ですから、異なる製造方法であっても、製造物が同一であるならば同一の発明と判断されます。
この意味で、プロダクト・バイ・プロセスクレームは一般的に広範な特許権を取得できるといえます。

プロダクト・バイ・プロセスクレームは、その範囲が広いため、発明の詳細な説明の記載不十分であれば、出願時の技術常識に照らして、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えないとして、開示要件違反となりやすいと言えます。

また、プロダクト・バイ・プロセスクレームは、必ずしも発明の範囲が明確とはいえず、発明を明確に把握できず、または実施が可能といえない場合があります。実施可能要件との関係では、特にスクリーニング方法により得られた医薬品化合物のクレームで問題となっています。

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