特許権の侵害判断の基本
特許権の侵害判断はどのように行われるのか
特許権は、特許請求項の記載内容によって権利の範囲が決定されます。
そして、特許請求項は文字で記載されます。
つまり、特許は、技術的思想であり、それを特定する事項について文字で表現されることになるのです。
ですから、特許権を侵害するか否かは、特許請求項に文字で記載されたものに含まれるか否かにより判断されることになります。
特許権を侵害しているか否かの判断は、特許請求項に記載された特許権の特定からはじまります。次に、侵害していると疑われている物件(一般的に「被疑侵害物件」と呼ばれます。)の特定を行います。
そして、特許と被疑侵害物件を技術的要素ごとに分説して、各技術的要素ごとに対比し、原則として両者が一致する場合に特許権を侵害すると判断されるのです。
これを簡単に説明しますと次のようになります。
特許がAという技術的思想であり、それがa,b,cという技術的要素により構成されているとします。
これを以下のように表現します。
特許権:A=a+b+c
他方、侵害物件がBという技術思想であり、それがα、β、δという技術的要素により構成されているとします。
これも上記したのと同様に次のように表現します。
侵害物件:B=α+β+δ
このとき、各技術的要素であるa=α、b=β、c=δの関係が成り立つとき、A=Bとなり、Bは特許権を侵害することになるのです。
他方、a≠α、b≠β、c≠δのいずれかひとつでも存在する場合にはA≠BとなりBは特許権を侵害していないことになります。
侵害訴訟において、特許権を侵害していると主張する原告は、上記したa=α、b=β、c=δを主張・立証し 特許権を侵害していないと反論する被告は、a≠α、b≠β、c≠δのいずれかひとつでも立証できると、 原則的に被告の勝訴ということになります。