知的財産
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模倣の主体と客体

模倣を行う主体は?模倣の対象は?

模倣する主体

周知表示混同惹起行為においては、他人を商品や営業の主体に限られず、当該他人と組織上・経済上なんらかの関連があるものを含むと解釈されています。

商品形態模倣行為においてもこれと同様に解することができるのでしょうか。

この点、東京地裁平成11年1月28日「キャディバック事件」判決は、以下のとおり判示し、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られると判断しています。

「不正競争防止法2条1項3号の趣旨につき考察するに、他人が資金・労力を投下して開発・商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらずことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、また、このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することによって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解するのが相当である。」

他方、大阪地裁平成16年9月13日「ヌーブラ第1事件」判決は、上記判決と同様の趣旨について判示し、製造メーカから独占的なライセンスを取得して販売する者についても製造者に準ずる資本投下が認めれることを理由に保護されるとしています。

いずれの判決も優先的に回収しなければならない投下資本が存在するか否かを基準に保護すべきか否かを決定しています。
原則としては、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるのですが、これと同様の投下資本やリスク負担を要するような者についても保護されるものと理解しておいてよいといえます。

商品形態性

不正競争防止法では、商品の形態とは「需用者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。」と規定されています。

他方、意匠法上の意匠とは、先に説明したとおり、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合をいう」とされています。

このことから、不正競争防止法の商品形態と意匠法の意匠とは重なり合う部分があります。
しかし、意匠法は「物品」の形状等を対象とするのに対し、不正競争防止法は「商品」を対象としています。

ですから、複数の物品がひとまとまりで販売されている商品については、意匠法施行規則で列挙された組物の意匠に該当しない限り意匠として登録を受けることはできませんが、不正競争防止法の場合には、保護を受けることができます。

大阪地判平成10年9月10日「タオルセット事件」判決においては、複数のタオルを折りたたんで一つの箱に収めて販売する商品について、不正競争防止法上の商品形態性が認められています。

なお、このようなタオルセットについては、意匠登録を受けることができませんので、意匠権による保護はありません。
ただ、不正競争防止法において保護される商品形態は、需用者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状等であり、意匠について通常の用法に従った使用の範囲で視覚を介して美感を起こさせるものに限定されている点と同様であると言えます。

大阪地判平成8年11月28日「断熱ホース事件」判決においては、断熱ホースの内壁の形状等が商品形態に該当するか争われましたが、需用者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができるものではないとの理由で、商品形態性が否定されています。

周知表示混同惹起行為や署名表示冒用行為における商品等表示には、既に説明したように商品の形態そのものが含まれます。

このことから、商品形態模倣行為に該当しないとしても、当該商品形態が周知表示や著名表示と認められる場合には、これらの不正競争行為に該当する可能性があります。

東京高判平成10年2月26日「ドラゴンソード事件」判決を見ても、商品形態の実質的同一性の判断は厳格になされる傾向にあり、周知表示や著名表示による保護の検討は常に行っておくべきであると考えています。

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