知的財産
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商品形態模倣

登録されていない商品形態も保護の対象となる

不正競争防止法は、商品形態模倣行為における商品形態には、当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除くと規定しています。

仮に、商品の機能を確保するために不可欠な形態について独占を認めるということは、その機能そのものについての独占を認めることになります。
商品の機能は、まさしく技術思想にあたりますが、特許法で定められた要件の有無にかかわらずこの技術思想が保護されることになってしまいます。

また、特許権の対象とはならない商品の機能は、全ての人が自由に使用できるものであるはずにもかかわらず、不正競争防止法によって、事実上、特定の人に独占を認めることにもなるのです。

そこで、不正競争防止法は、当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除くことにしたわけです。

以前、不正競争防止法では、「他人の商品と同種の商品が通常有する形態」を除外するというふうに規定されていました。

しかし、東京地判平成9年3月7日「ピアス事件」判決では、以下のとおり判示した上で、機能・効用のための不可避的形態であるか否かが判断基準になると明言しました。

この規定を「商品の機能・効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態であることが通常であり、そのような商品形態を特定の者に独占させることは、その機能・効用を有する商品の独占につながり、不正競争防止法の趣旨に反する

また、経済産業省においても、「全く新規な商品を他者に先駆けて市場に導入した場合、その時点では、その商品と同種の商品が存在しないこととなる。
このような場合であっても、当該他人の商品と同一又は類似の機能及び効用を実現するために商品が通常有する形態は、これを模倣しても不正競争とはならない。」としていました。

そこで、「他人の商品と同種の商品が通常有する形態」という規定の方法が曖昧であるという理由で、現在の「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」と規定されるようになったのです。

「模倣する」とは

不正競争防止法では、「模倣する」とは「他人の商品形態に依拠して、これと実質的に同一の商品形態の商品を作り出すこという。」と規定しています。
つまり、模倣は、1他人の商品に依拠すること、2結果物が実質的に同一であることの二つの要件で成り立っているのです。

著作権法の複製権と同様に、偶然に実質的同一の物を販売等しても商品形態模倣行為にはなりません。
あくまで、他人の商品に依拠したということが必要なのです。

結果物が実質的に同一か否かは、同種の商品間における商品の形態を比較して実質的に同一であるか否かを判断することになります。

いかなる場合に実質的に同一となるかについては、両方の形態を比較して、物理的に同一である部分が商品全体からみて重要な意味を有する部分であるか否かを考慮して判断されている裁判例が多く見られます。
東京地判平成11年6月29日「ファッション時計事件」判決は、以下のとおり判示しています。

「不正競争防止法2条1項3号にいう『模倣』とは、既に存在する他人の商品の形態をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、他人の商品と作り出された商品を対比して観察した場合に、形態が同一であるか実質的に同一といえる程度に類似していることを要するものである。そして、問題とされている商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、商品の全体的形態に与える変化が乏しく、商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合には、当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態というべきである。これに対して、当該相違部分についての改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変が商品全体の形態に与える効果等を総合的に判断したときに、当該改変によって商品に相応の形態的特徴がもたらされていて、当該商品と他人の商品との相違が商品全体の形態の類否の上で無視できないような場合には、両者を実質的に同一の形態ということはできない。

この他、東京高判平成10年2月26日「ドラゴンソード事件」判決、大阪地裁平成10年9月17日「網焼プレート事件」判決においても同様な判断が示されています。実質的に同一か否かについては、これらの裁判例の基準が非常に参考になります。

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