知的財産
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不正競争防止法による保護

不正競争防止法は、意匠法、商標法、著作権法、民法とは異なり、何らかの権利を保護する法律ではなく、競業秩序の維持を目的として、一定の行為を規制する法律です。

しかし、不正競争行為の抑制は、利益を侵害された者からの訴え等により実現されるという方法を採用しています。
この結果、利益を侵害された者を保護する機能を併せもっているのです。

キャラクターの保護と関係する不正競争行為としては、「他人の商品等表示として需用者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用する等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」(法2条1項1号)、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用する等の行為」(同項2号)、「他人の商品形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡する等の行為」(同項3号)が考えられます。

キャラクターを不正競争防止法で保護するには、キャラクターが「商品等表示」に該当する、あるいは「商品形態」に該当する必要があります。

2条1項1号、2号による保護

キャラクターの名称や容姿が繰返し使用され、特定の商品等につき、特定の者が使用しているという認識が生じるようになると、キャラクターの名称や容姿が商品等表示性を備えるようになります。

この結果、キャラクターが不正競争防止法法2条1項1号及び2号により保護される可能性が出てくるのです。キャラクターの商品等表示性を認めたものとして、以下の裁判例が存在します。

東京地裁平成2年2月28日「ミッキーマウス不正競争防止法」事件

「原告表示と本件標章とを対比すると、本件標章の『ミッキーマウス』、『ミニーマウス』、『ドナルド・ダック』、『グーフィー』のキャラクター及び『MICKEY MOUSSE』の表示は、それぞれ原告表示の各キャラクター及び『MICKEYMOUSE』の表示に類似することが明らかである。また、・・・(被告ら)の本件行為は、少なくとも右被告らと原告らとの間に同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存するものと誤信されるものであることが認められる。そして、右混同の事実が認められる以上、特段の事情がない限り、原告らは、その営業上の利益を害されたものというべきところ、右特段の事情を認めるに足りる証拠はない。以上の認定判断によれば、・・・(被らは、共同して、)本件行為をしたものであるが、その行為は、不正競争防止法1条1項1号に該当する。」。

東京地裁平成2年2月19日「ポパイネクタイ事件一審」判決

「ポパイポパイのキャラクターは、・・・同原告らとポパイのキャラクターの使用許諾を受けている企業のグループの商品であることを示す表示として、遅くとも昭和45年以降においては、日本国内において広く認識されていたものと認めるのが相当である。」。

2条1項3号による保護

他方、キャラクター人形等のように、キャラクターそのものが商品の形態となっているとき、キャラクターは、「商品形態」として不正競争防止法2条1項3号により保護することができます。

ただし、本号による保護には、後に説明するように厳格に運用される傾向がある上、市場で販売されるようになってから3年間しか保護されません。
そこで、商品の形態であっても、商品等表示として不正競争防止法2条1項1号、2号により保護することができないか検討する必要があるのです。

この点、多くの裁判例において、商品の形態が、商品の出所表示の機能を有するに至り、「商品等表示」としての形態が周知性あるいは著名性を獲得する場合には、1号あるいは2号による保護が認められるとされています。

東京地裁昭和53年10月30日「投げ釣り用天秤事件」判決では以下のとおり判示されています。

「商品の形態は、その商品が本来具有すべき機能を十分に発揮させることを目的として選択されたものであつて、商品の出所を表示することを目的とするものではないが、その商品の形態が、同種の商品の中にあって独特の形状を有し、あるいは一定の商品に長期間又は短期間でも強力な宣伝などが加わって使用された結果、商品の形態自体が、取引上二次的に、その商品の出所表示の機能を備える場合があり、かような場合には、その形態自体が、商品の技術的機能に由来する必然的、不可選択的な結果でない限り、不正競争防止法第1条第1項第1号の規定の趣旨に照らして、同号にいう『他人ノ商品タルコトヲ示ス表示』に該当するものと解すべきである。」

東京地裁平成3年11月27日「コイル状マット事件」判決

「右の各事実を総合すれば、軟質合成樹脂の線条複数本をもって形成されたコイル状構造体という原告製品の形態は、その形態の特異性と、販売実績及び宣伝広告等により、原告らの商品であることを示す表示として、原告製品の取引者及び需要者の間において広く認識されていると認めることができる。」

その他にも、「ハンドリベッター」(大阪地判昭62・10・7)、「にっくねえむキーホルダー」(東京地判平3・5・31)、「無線操縦用模型飛行機」(大阪地判平4・7・23)、「ウォーターマシンガン」(東京地判平6・12・26)、「ローズ型チョコレート本案」(東京地判平7・2・27)、「キッズシャベル」(東京地判平9・2・21)、「床下喚起口」(新潟地三条支判平9・3・21)、「iMac」(東京地決平11・9・20)、「LEVIS弓形ステッチ」(東京地判平12・6・28)等の裁判例において、商品形態の商品等表示性が認められています。

出所表示としての機能の喪失

不正競争防止法2条1項1号、2号によってキャラクターを保護するには、用いられたキャラクターが、それを使用する者の出所を示すマークとして「周知」であること、あるいは「著名」であることが必要になります。ところが、キャラクターを使用した商品が複数の業者によって製造販売されることが頻繁に見受けられ、この場合には特定業者の出所を示すマークとしての機能が薄れていくことになります。

このような状況下において「商品等表示性」が否定されたのが東京地裁昭和51年4月28日「仮面ライダーV3事件」判決です。
判決を引用しますと以下のとおりです。

「原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3のが、原告商品に附された『ポピー』の文字は、その附された場所及びその文字の大きさからみて容易に人目につかないものであるのみならず、原告製品には、なお『石森プロ』、『毎日放送』、『東映』の文字も附されている関係上、原告商品の出所を原告として示す作用を殆んど果していないと考えられ、また、原告製品も原告以外の業者の製品も同じものを模して作られた人形であって、その形態に格別の差異があらわれるとみられない以上、その素材等に前記のような差異があつたとしても、この程度のことは、原告製品を他の業者の人形製品と区別する徴表となり得るものとも考えられない。それのみならず、バンダイは、原告製品よりやや大型であるとはいえ、原告製品と同じ軟質性のビニール製の人形『仮面ライダー』及び『仮面ライダーV3』を製造販売しているのであるから、原告仮面ライダー及び原告仮面ライダーV3の形態が、原告の商品たることを示す表示として広く認識されるに至っていることは、ますますいい難い。」との理由により当該人形の「形態が特に原告の商品たることを示す表示として広く認識されるに至っていたということはできない。」

現在においては、映画製作会社のライセンス戦略との兼ね合いで、複数の業者が一つのキャラクターを使用しするという状況は避けられません。
そこで、特定のキャラクター使用する企業群の出所を示す表示として保護することができないか検討する必要があります。

企業群を表示するものとしての保護

最高裁判所昭和59年5月29日「NFLヘルメットマーク事件」判決は、以下のように判示してこれを肯定しています。

「ある営業表示が不正競争防止法1条1項2号所定の他人の営業表示と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両表示を全体的に類似のものと受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべきものであることは当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和57年(オ)第658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号登載)、また、ある商品表示が同項1号所定の他人の商品表示と類似のものにあたるか否かの判断についても、前示営業表示の類似判断の場合と同一の基準によるべきものと解するのが相当である。」と判示し、「不正競争防止法1条1項1号又は2号所定の他人には、特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれるものと解するのが相当であり、また、右各号所定の混同を生ぜしめる行為には、周知の他人の商品表示又は営業表示と同一又は類似のものを使用する者が、自己と右他人とを同一の商品主体又は営業主体と誤信させる行為のみならず、自己と右他人との間に同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存するものと誤信させる行為をも包含し、混同を生ぜしめる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解するのが相当である。」

また、キャラクターに関する東京地裁平成2年2月19日「ポパイネクタイ事件一審」判決においても同様の判決が下されています。

「被告らは、ポパイのキャラクターの著名性は、不正競争防止法が保護している商品の出所表示機能とは異なるものである、すなわち、取引者又は需要者は、『ポパイの商品』を『ポパイの絵柄のついた商品』と認識しているだけで、『ポパイの絵柄のついた商品は、特定の者の製造販売に係る商品』と認識しているわけではない旨主張するが、・・・ポパイの漫画を無断で使用する者に対し、警告書を発する等厳格に対処する一方、・・・その商品に原告らのライセンシーであることを示すために証紙を貼らせ、かつ、『by King Features Syndicate、Inc.』等と表示させ、・・・ライセンスを受けている企業の商品であることを明示させている・・・、ポパイのキャラクターが漫画として著名であるだけでなく、本件漫画の著作権者からライセンスを受けている企業を含む前示グループの商品表示としても著名であることを示すものである。」、「被告らは、・・・ライセンシーは、個々に異なるポパイの絵や文字を、ときには商標的に、ときには装飾的に、全く野放図に使用しているだけであり、取引者又は需要者も、単に右表示を本件漫画の主人公であるポパイとしてのみ認識し、その嗜好ないし趣味感から商品を購入しているにすぎない旨主張するが、・・・ポパイの絵を種々の表情、姿態でその商品に表示していたとしても、それが本件漫画の主人公であるポパイの絵であると認識しうる限り、取引者又は需要者は、その商品をポパイの商品表示が付された商品と認識しうるのであるから、・・・、その図柄は商品表示としての出所表示機能を有しないものということはできない。」、「ライセンシーを構成する個々の企業に変動があったからといって、・・・同原告らとポパイのキャラクターの使用許諾を受けているライセンシーのグループが解体するということでもない限り、右グループの取り扱う商品とポパイのキャラクターとの間の商品の出所関連性が失われるものとは認められない」。

なお、控訴審である東京高裁平成4年5月14日「ポパイネクタイ事件二審」判決においても同様の判決が下されています。

また、ディズニーの「ミッキーマウス」等のキャラクターが、同一の商品化事業を営むグループの商品表示及び営業表示として周知であるとされた事例として、東京地方裁判所平成2年2月28日判決があります。

最高裁において、「不正競争防止法1条1項1号又は2号所定の他人には、特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれる」と判示されて以降、かかる解釈は確立されたものとなったといえます。

そして、複数の事業者によって、特定のキャラクターを使用した商品が製造されている場合に、複数の事業者が一体のグループとして需用者に認識されていれば、実務上、他人の「商品等表示」であるという取り扱いが行われています。

装飾的機能と出所表示機能の共存

キャラクターを商品に使用する主な目的の一つに、それが有する装飾的要素を利用するという面があります。そして、この場合、商標と同様に、装飾的要素を主眼にしている場合にも商品等出所機能が維持されるのか問題となります。この点については、商標と同様に考えることができ、いかに装飾的要素が色濃く表れていたとしても、それに表示機能が残存する限り、「商品等表示」として本法の保護の対象となるなといえます。

3号の保護主体

不正競争防止法による保護④ 不正競争防止法2条1項1号及び2号については、ライセンスを受けている企業グループを表示するものとして、保護を受けることができると説明しました。
それでは、3号の商品形態保護についても、同様に広範な主体が保護を受けることができるのでしょうか。

この点が争われた裁判例として、

東京地裁平成11年1月28日「キャディバック事件」判決

があります。

この事件では、製造メーカからライセンスを取得している販売業者が3号の保護の対象となるかについて争われたのですが、否定されました。

「不正競争防止法2条1項3号の趣旨につき考察するに、他人が資金・労力を投下して開発・商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらずことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、また、このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することによって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解するのが相当である。右によれば、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為につき差止めないし損害賠償を請求することができる者は、形態模倣の対象とされた商品を、自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるというべきである。」

他方、大阪地裁平成16年9月13日「ヌーブラ第1事件」判決は、独占的販売権を有する販売業者については、3号により保護を受けることができると判示しました。

「3号の趣旨をみると、他人が市場において商品化するために資金、労力を投下した成果の模倣が行われるならば、模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少し、模倣者と先行者の間に競争上著しい不公正が生じ、個性的な商品開発、市場開拓への意欲が阻害され、このような状況を放置すると、公正な競業秩序を崩壊させることになりかねない。そこで、3号は、他人が商品化のために資金、労力を投下した成果を、他に選択肢があるにもかかわらず殊更完全に模倣して何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為をもって、不正競争としたものである。このような3号の趣旨を前提として、3号による保護の主体の範囲を考えると、自ら資金、労力を投下して商品化した先行者は保護の主体となり得るが、そのような者のみならず、先行者から独占的な販売権を与えられている者(独占的販売権者)のように、自己の利益を守るために、模倣による不正競争を阻止して先行者の商品形態の独占を維持することが必要であり、商品形態の独占について強い利害関係を有する者も、3号による保護の主体となり得ると解するのが相当である。このような解釈は、公正な競争秩序の維持を目的とする前記の3号の趣旨にもかなうものである。他方、先行者が商品化した形態の商品を単に販売する者のように、商品の販売数が増加することについて利害関係を有するとしても、先行者の商品形態の独占について必ずしも強い利害関係を有するとはいえない者は、保護の主体となり得ないと解すべきである。不正競争防止法は、2条1項において「不正競争」を定義し、同項3号では、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を不正競争とし、差止請求の主体について、3条1項において、『不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者』としており、損害賠償請求の主体については、4条において、不正競争により『営業上の利益を侵害』された者を損害賠償請求の主体として予定しているものと解され、例えば特許法100条1項が差止請求の主体を『特許権者又は専用実施権者』としているのとは異なった規定の仕方をしている。独占的販売権者は、3号所定の不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者に該当するから、独占的販売権者を3号の保護主体と解し、その差止請求及び損害賠償請求を認めることは、不正競争防止法上の文言にも合致するというべきである。3号は、その主要な要件が、『形態の模倣』という比較的簡易な要件であり、安易に適用を拡大すると、かえって自由な市場活動が妨げられるおそれがあるとも考えられる。しかし、商品化を行った先行者のほかに、独占的販売権者のように商品形態の独占について強い利害関係を有する者に限定した範囲で3号の保護の主体を考えるならば、そのような弊害を生ずることはないというべきである。また、独占的販売権者も3号の保護主体となると解したとしても、独占的販売権者が訴訟上3号に基づく権利を行使するためには、先行者が商品化したこと、及びそのような先行者から独占的販売権を与えられたことを主張立証しなければならず、先行者が訴訟上3号に基づく権利を行使する場合に比べて、商品化の点について主張立証責任が軽減されるわけではないから、この点からも、3号の適用範囲が安易に拡大されることはないといえる。さらに、実際上、独占的販売権者が商品の製造販売を専ら担当しており、商品化した先行者が3号に基づく権利行使をする状況にない場合も考え得るところであるから、上記の解釈は、そのような場合においても、模倣を阻止し、公正な競争秩序の維持を図るという点からしても、妥当なものということができる。他方、独占的販売権者は、独占権を得るために、商品化した先行者に相応の対価を支払っているのが常であり、先行者は商品化のための資金、労力を、商品の独占の対価の形で回収していることになるから、独占的販売権者を保護の主体として、これに独占を維持させることは、商品化するための資金、労力を投下した成果を保護するという点でも、3号の立法趣旨に適合するものである。以上によれば、独占的販売権者は、3号による保護の主体となり得るというべきである。」

模倣

不正競争防止法2条1項3号によりキャラクターの保護を受けるには、キャラクターの容姿等が「模倣」されていることが必要になります。

ここで、「『模倣する』とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。」(2条4項)とされています。この「実質的に同一」とは、どの程度の広がりをもっているのでしょうか。

すなわち、どの程度同一であれば、実質的に同一という判断されるのか検討しておく必要があります。

この点、以下の裁判例を見る限り、「実質的に同一」の範囲は、厳格に解されていると言わざるを得ません。3号の商品形態模倣は、商品を市場においてから3年間の範囲で保護される(19条1項5号イ)だけであり、期間としては非常に限定されたものです。それにもかかわらず、同一性の判断は、非常に慎重になされているのです。

東京高裁平成10年2月26日「ドラゴンソード事件」判決

「不正競争防止法2条1項3号にいう『模倣』とは、既に存在する他人の商品の形態をまねてこれと同一または実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、客観的には、他人の商品と作り出された商品を対比して観察した場合に、形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似していることを要し、主観的には、当該他人の商品形態を知り、これを形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似した形態の商品と客観的に評価される形態の商品を作り出すことを認識していることを要するものである。ここで、作り出された商品の形態が既に存在する他人の商品の形態と相違するところがあっても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、酷似しているものと評価できるような場合には、実質的に同一の形態であるというべきであるが、当該改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変による形態的効果等を総合的に判断して、当該改変によって相応の形態上の特徴がもたらされ、既に存在する他人の商品の形態と酷似しているものと評価できないような場合には、実質的に同一の形態とはいえないものというべきである。」、「右のとおり、原告商品は頭部が一個の通常の竜であるのに対し、被告商品は胴体の両端に頭部のある双頭の竜であるという相違点が存するところ、被告商品の製造、販売時において、双頭の竜を表したキーホルダーが存在したことを認め得る的確な証拠はなく、また、双頭あるいは複数の頭を有する竜のデザイン自体がよく知られたものであることを認め得る証拠もないこと、原告商品、被告商品とも、基本的には、洋剣と竜のデザインを組み合わせたものであって、商品としての形態上、竜の具体的形態が占める比重は極めて高く、被告商品において洋剣の柄部分側と刃先側に表された竜の頭部が向き合っている形態は、需要者に強く印象づけられるものと推認されることからすると、被告商品における竜の具体的形態は、被告商品の全体的な形態の中にあって独自の形態的な特徴をもたらしているものと認められること、本体部分の大きさの違いもわずかであるとはいえず、表面部分の面積を対比しても、ほぼ一(原告商品)対二(被告商品)程度の違いがあり、量感的にも相当の違いがあること(検甲第一、第二号証)からすると、原告商品の形態と被告商品の形態との間に前記のとおりの共通点が存すること、及び、原告商品の製造、販売当時(平成六年一月)において、原告商品の基本的構成である、本体部分において、全体が金属製で偏平であり、柄及び刃体と鍔部とが交差して縦長の概略十字形で表面側の十字の中心部分に宝石状にカットされた円い形状のガラス玉がはめ込まれている双刃の洋剣に、竜が、洋剣の刃先部分から、刃体、鍔部、柄部と上方に向けて左巻きにほぼ二巻き螺旋状に巻きついた状態に表側、裏側共に浮彫りされている形態、あるいはこれに類似する形態を有するキーホルダーが存在していたことを認めるに足りる証拠がないことを考慮しても、被告商品の形態が原告商品の形態に酷似しているとまでは認め難く、実質的に同一であるとは認められない。」

この判決を見てもお分かりいただけるように、裁判所は商品の形状を特定の者に独占させるか否かの判断においては非常に珍重に判断していると評価できるのです。

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