知的財産
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商標による保護

商標は、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくは、これらの結合又はこれらと色彩との結合であることが前提となっています。

他方、キャラクターの絵等は、「図」あるいは「図」と「色彩」との結合に該当し、キャラクターの人形は、「立体的形状」あるいは「立体的形状」と「色彩」との結合に該当し、キャラクターの名称は「文字」あるいは「文字」と色彩の結合に該当します。

また、キャラクターの絵や写真と名称を組み合わせたものについては、「図」と「文字」あるいは「図」と「文字」と「色彩」との結合に該当し、「立体的形状」の表面に「文字」、「色彩」あるいは「文字及び色彩」が記載されたものは、これらの結合といえるので、商標法の保護の対象となります。

このことから、「文字」を基本とする商標は、キャラクター等の名称を保護することができますし、「図」あるいは「立体的形状」を基本する商標は、キャラクター等の姿態そのものを保護することができます。

なお、キャラクターの名称は、著作権法によって保護することができず、物のパブリシティー権が認められていない現状において、商標登録を行うことが保護の唯一の手段であるとよいと思います。

ただし、商標法による保護を受けるには、商標登録を受けておかなければなりません。
そして、商標登録には登録要件があり、これをを充たさなければい商標登録を受けることができません。

キャラクターの絵を基本とする商標やキャラクターの姿を基本とする立体商標が、登録要件との関係で問題になることはあまりないと思われますが、「文字」を基本とする商標については、法3条1項4号(ありふれた氏名又は名称)及び同6号(その他識別力がない商標)、法4条1項8号(他人の氏名等が含まれる商標)との関係で問題となりえます。

また、キャラクターの絵を基本とする商標についても、キャラクターそのもの動き持つ存在であるがゆえに、全ての容姿のパターンについて商標登録を行い、動きのあるキャラクターをもれなく保護することが物理的に不可能であることから、商標法による保護にも限界があると言わざるを得ません。

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して商標ごとにおこなわなければなりません。
この結果、キャラクタの名称や絵を商標する際にも、予め指定する商品又は役務を特定する必要があのです。

キャラクターは、既に説明しましたようにありとあらゆる商品・役務に使用されます。ところが、出願時点においては、将来使用される方法を全て予測して登録しておくには限界があります。
キャラクターを商標法によって保護する上で、この指定商品・役務の選定というものがネックになってくるのです。

商標法は、人間の創作的活動を保護する意匠とは異なり、信用の形態した標章を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしており、商標法によって保護される商標は、それを使用する者を表示するものであることが大前提となっています。

このことから、商標法によってキャラクターの保護を受けるために、保護の対象となるキャラクターが使用する者を表示していることが必要になるのです。
この要件は、商標権を行使する際にも求められ、専ら装飾的に使用されている標章については、商標権の権利行使そのものが認められないと解されているのです。
ただし、キャラクターを商品等に使用した場合、そのキャラクターは、装飾として用いられるととともに、使用する者を表示しているという性格も持ち合わせているものです。
裁判例においても、装飾的性格を有するということのみで即時に商標権の行使が認められなくなるのではなく、装飾的性格が強調されすぎもはや出所表示としての機能が喪失されている場合に商標権の行使が制限されているのです。

以下では、代表的な裁判例を紹介します。

東京地裁昭和51年10月20日「清水次郎長事件」判決

「商標権侵害の要件の一つである登録商標若しくはこれに類似する商標の使用を考える場合、ここでいう商標とは、商標法第2条第1項に規定する『文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用をするもの』であることを要することはいうまでもないが、商標は本来自他商品識別の機能を果すことを目的とする標識であり、わが国の商標制度も商標の持つこの自他商品識別の機能の維持保護を目的としていることは、同法第1条に規定する商標法の目的に照らし明らかというべく、従って、前記第2条第1項は形式的には商標の自他商品識別機能について規定するところがないが、この条項の中には当然自他商品識別の機能を有するものとしての商標の概念が前提されかつ含まれているものと解されなければならないものと考えられる。」と判示し、商標として保護される当然の前提として当該商標が自他商品識別機能を有することを求めています。

大阪地裁昭和58年2月25日「ポパイ商標権侵害事件」判決

「被告商品のマフラーの一方隅部分に独特の装飾文字で『POPEYE』と横書きされているものであり、その書体だけをとり出せば、それはいわゆるロゴタイプ風の肉太な文字が順次右側の文字の一部が左側の文字の下方へ少しずつかくれる様な綴り体となって独特の意匠的美感を有するものではあるが、それが付された商品たるマフラー全体との釣合において観察すると、・・・、一方隅に小さく付されているために(被告)標章の有する右意匠的美感は必ずしも目立たず、マフラー全体の単一の色調にアクセントをつけるものとして機能するいわゆる『ワンポイントマーク』としても用いられていることが認められる。ところで、このようにある標章がいわゆるワンポイントマークとして用いられることの意味についてみると、一般消費者に対して、その標章自体のもつ装飾、意匠的な美感に訴える面があるのは無視できないけれども、右『ワンポイントマーク』が有する商品全体の単一的色調にアクセントをつける機能上、そこに注目した消費者の目を、次にはその標章の有する外観、呼称、観念に表わされるブランド機能にも引きつけ、そのブランドに対する品質面での信頼から、右標章の付された商品の選択をなさしめることに大きな期待を寄せているものと考えられる。そうとすれば、いわゆる『ワンポイントマーク』の有する商標的機能は無視し得ないものというべく、本件(被告)標章も・・・、単に装飾的、意匠的な使用のみに止まらず、商品出所表示機能、品質保証機能を持たせた商標としての機能をも兼ね備えた形で使用されていると認めるのが相当である。」

東京地判平成12年3月23日「Juventus事件」判決

「被告標章が一般消費者に対し装飾的、意匠的な美感に訴える面を有しているとしても、それによって商標自体が有する商品の識別機能が失われるものではなく、また、被告商品に被告標章以外にその製造販売主体を示す別の表示があっても、それによって直ちに被告標章の使用が商標としての使用といえなくなるものではない。」、「被告標章は、これに接した一般消費者に対して一定の出所を指示する態様で用いられているといわざるを得ず、商標として使用されているものというべきである。」

立体商標による保護

キャラクターの人形等は立体商標として保護することが可能です。

ここで立体商標に関する特許庁の審査基準は以下のとおりです。

「相当長期間にわたる使用、又は短期間でも強力な広告、宣伝等による使用の結果、同種の商品等の形状から区別し得る程度に周知となり、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至った場合を除き、需要者が指定商品等の形状そのものの範囲を出ないと認識するにすぎない形状のみからなる立体商標は識別力を有しないものとされ、指定商品等との関係において、同種の「商品(その包装を含む。)又は役務の提供の用に供する物」(以下「商品等」という。)が採用し得る立体的形状に特徴的な変更、装飾等が施されたものであっても、全体として指定商品等の形状を表示してなるものと認識するに止まる限りそのような立体商標は識別力を有しないものとする。」

ただし、識別力を有するものとは認められない立体的形状に、識別力を有する文字、図形等の標章が付され、かつその標章が商品又は役務の出所を表示する識別標識としての使用態様で用いられているものと認識することのできる立体商標は、識別力を有するものとするとされています。

また、知財高裁平成18年11月29日「ひよこまんじゅう事件」判決は、以下のとおり判示しています。

「被告は、平成9年4月1日、別紙『立体商標を表示した書面』のとおりの立体商標について、指定商品を『菓子及びパン』として商標登録出願をしたところ、平成11年8月13日付けで拒絶査定を受けたので、これに対する不服の審判請求をした。その手続の中で被告は、平成15年7月7日付けで指定商品を『まんじゅう』と補正し、その結果、平成15年7月24日、特許庁から『原査定を取り消す。本願商標は、登録すべきものとする。』との審決(甲55の1。以下、この審決を「登録審決」という。)を受け、平成15年8月29日、指定商品第30類『まんじゅう』とする立体商標・登録番号第4704439号として、設定登録を受けた。」、理由の要点は、「本件立体商標は商標法3条1項3号に該当するが、被告による永年使用の結果、取引者及び需要者の間で被告の業務に係る商品であると認識されるに至ったから、同条2項により商標登録を受けることができる」等としたものであった。
「本件訴訟の争点は、本件立体商標が法3条2項の要件を具備するに至ったかどうかである。」、「当裁判所は、被告の文字商標『ひよ子』は九州地方や関東地方を含む地域の需要者には広く知られていると認めることはできるものの、別紙『立体商標を表示した書面』のとおりの形状を有する本件立体商標それ自体は、未だ全国的な周知性を獲得するまでには至っていないと判断する。」、その理由として、「被告の直営店舗の多くは九州北部、関東地方等に所在し、必ずしも日本全国にあまねく店舗が存在するものではなく、また、菓子『ひよ子』の販売形態や広告宣伝状況は、需要者が文字商標『ひよ子』に注目するような形態で行われているものであり、さらに、本件立体商標に係る鳥の形状と極めて類似した菓子が日本全国に多数存在し、その形状は和菓子としてありふれたものとの評価を免れないから、上記『ひよ子』の売上高の大きさ、広告宣伝等の頻繁さをもってしても、文字商標『ひよ子』についてはともかく、本件立体商標自体については、いまだ全国的な周知性を獲得するに至っていないものというべきである。したがって、本件立体商標が使用された結果、登録審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができたと認めることはできず、本件立体商標は、いわゆる『自他商品識別力』(特別顕著性)の獲得がなされていないものとして、法3条2項の『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』との要件を満たさないというほかない。」

以上の特許庁、裁判所の判断から、立体商標の登録においては、厳しい判断がなされる傾向にあるといえます。
これは、商標は、更新されることにより実質的に無期限の保護を得られる可能性があるところ、特定の者に、特定の形状を独占させることについては慎重に判断すべきであるという考えが基本にあるためであると考えています。

例えば、キャラクターが人気を博し、その人形がいろいろな会社によって製作されるようになってからでは、特定の会社がライセンスをしているということが常に明示されていない場合には、登録に支障が生じる可能性が高くなると言えます。

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