取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
会社の業務執行は取締役によって行われるため、業務の適正を確保するためには取締役による職務執行が法令・定款に適合することを確保する必要があります。この点、立法担当者は、法令違反が生じる可能性がある行為を整理し、違反行為の予防、違反行為に対する対応策を決議しておくべきであるとしています。
具体的には
- 会社の業態応じて生ずる可能性が高い法令違反行為(横領、談合、顧客に対する欺罔ないし強迫的行為、業績の粉飾等)の把握
- その典型的な法令違反行為の監視・予防体制(法令遵守マニュアルの作成や使用人間の監督体制)
- 法令違反行為が生じた場合の対処方法・対処機関に関する事項等
となります。
取締役会において決議しておくべき事項としては、以下のようなものがあります。
- コンプライアンス規定の策定
- コンプライアンス体制の整備・問題点の把握
- 役員等に対する継続的なコンプライアンス教育の実施
- 内部通報制度の整備
- 役員等のコンプライアンス規定違反に対する対処
取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
監査役が取締役の職務執行を監査するためには、取締役の職務執行に係る情報が適切に保存され、改ざん等がなされない状態におかれ、かつ、監査役がその情報に容易にアクセスできるような状況を確保するためのものです。なお、取締役の職務には、会社の代表や業務担当取締役としての職務に加え、監督機関としての職務も含まれます。また、取締役が従業員を用いて業務を行うことがあることから使用人による行為も含まれると解されています。
この点、立法担当者は、取締役及び従業員の業務内容等に関する記録方法及びその保管方法、保管期間、保管場所、閲覧方法に関する体制の整備を決議しておくべきであるとしています。
具体的には
- 取締役が意思決定、業務執行、監督を行う場合において、それらの行為をしたことをどのような形で記録として残すか
- その記録を何年間、どこに保存するか
- その記録を検索し、閲覧するには、どのような方法をとるか
- 従業員の行為をどのように記録・保存・閲覧するか
となります。
取締役会において決議しておくべき事項については、上記した各事項につき具体的に定められた文書管理規程等に基づき、情報の保存、管理を行うということになります。
損失の危機の管理に関する規程その他の体制
損失の危機の管理に関する規程、その他の体制の整備は極めて重要であり、立法担当者は、決議すべき事項として以下のものを挙げています。
- 会社の業務に応じて生ずる可能性があるリスクとして、どのようなものが考えられるか
- リスクの現実化を未然に防止するための手続、機構
- リスクが現実化した場合の対処方法
- 当該手続や対処方法を実施するための人的・物的体制に関する事項
なお、リスク管理体制としては、制度設計とそれに基づく個別の対応方法とに区別することができます。そして、制度設計としては、リスク管理組織の設置、リスク管理方針の策定、緊急危機管理体制、リスク管理の監査、リスク管理の監査結果報告、リスク管理責任者の設置等があります。また、個別の対応方法としては,緊急危機に対する役員の対応、個別部署による対応、内部監査部門による対応等があります。
取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
会社が効率的に利益を得るためには、取締役による業務の適正さを確保するだけでなく、業務の迅速さも必要になります。
この点、立法担当者は、決議すべき事項として以下のものを挙げています。
- 取締役が職務執行を行うにあたって必要な手続(決済・指揮系統等)や職務分担の合理性を検証する体制
- 取締役の職務執行のために必要な使用人の員数の過不足を把握するための体制等に関する事項
具体的には、決済規程による意思決定機関の分掌、組織規程、業務分掌規程による業務の分掌、取締役会による中期経営計画、中長期経営戦略等の主要経営目標の設定、ロードマップの進捗、年度ごとの部門別、関係会社別の目標設定、実績管理を行う、執行役員制度等の人事組織・会議に関する体制、内部監査による状況把握等が挙げられます。
使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
会社の業務執行が取締役糖衣の指揮監督の下に使用人を通じて実行されることとの関係から設けられたものである。内容については、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」と基本的に同様である。