コーポレートガバナンス
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取締役の責任

取締役は、会社及び第三者に対して法的責任を負っています。

会社に対する責任

取締役の会社に対する基本的な責任は任務懈怠責任です。
取締役は、法令、定款、株主総会決議を遵守する義務を負っており、日本のあらゆる法令、定款、株主総会決議に従って任務を遂行する義務を負っています。
また、取締役と会社とは委任関係にあるため、取締役は会社に対して善管注意義務を負っています。
さらに、取締役は、会社に対して忠実義務を負っており、会社と取締役の利益が対立する場合、取締役は自身の利益を犠牲にして会社の利益を追求しなければなりません。
なお、取締役の忠実の義務の具体的な現れとして,以下のものがあります。

  1. 競業避止義務
  2. 利益相反取引に対する規制
  3. 報酬決定権の株主総会への移譲

法令、定款、株主総会決議順守義務、善管注意義務、忠実義務に違反する行為が取締役の任務懈怠となり会社に対して損害賠償責任を負うことになるのです。

経営判断の原則

st227.jpg取締役の任務遂行においてはリスクが伴うことが少なくありません。そして、取締役が任務形態責任をおそれてリスクともなう決定を行わなくなると、かえって会社に利益をもたらすことができないという事態に陥ります。
そこで、取締役には「経営判断の原則」が適用され、一定の場合には取締役が任務懈怠責任を負わないというルールが確立されています。
経営判断の原則が適用されるためには、

  1. 決定に必要な情報を十分に収集し、リスクを計算に入れていたこと
  2. 取締役会に情報を提供し、十分な議論が行われたこと
  3. 会社の利益になると考えた上での決定であること

の条件が必要になります。

競業避止義務

取締役が会社の事業の部類に属する取引を行った場合、取締役が会社の利益を犠牲にして自らの利益を図る可能性が高いことから、取締役は原則として会社と競業する取引を行うことが禁止されています。
ただし、取締役が取引に関する重要な事実を取締役会に開示し、取締役会がこれを承認した場合取引を行うことができます。なお、当該取締役は、取引を行った後、当該取引に関する重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。
そして、取締役がこれに反して会社に損害を与えた場合には会社に対して損害賠償義務を負うことになります。なお、競業行為により取締役が得た利益は会社被った損害であると推認されます。

利益相反取引

取締役が会社と取引を行った場合、取締役が会社の利益を犠牲にして自らの利益を図る可能性が高いことから、取締役は原則として会社と取引を行うことが禁止されています。
取締役と会社との取引に限らず、取締役が第三者に対して負っている債務について連帯保証や債務を引受けを行ってもらう場合、会社と第三者との取引であっても取締役が利益を受ける場合についても利益相反取引となり、原則として禁止されています。
ただし、取締役が取引に関する重要な事実を取締役会に開示し、取締役会がこれを承認した場合取引を行うことができます。なお、当該取締役は、取引を行った後、当該取引に関する重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。

第三者に対する責任

st229.jpg取締役が職務を行うにあたり、悪意または重過失により第三者に損害を加えた場合には、当該第三者に対して損害賠償義務を負うことになります。

取締役の第三者に対する損害賠償義務は、第三者が取締役の行為により直接損害を被った場合(直接損害)に限られず、取締役の任務懈怠により会社に損害を与え、その結果第三者が損害を被った場合(間接損害)についても負うものとされています。
例えば、取締役の悪意、重過失により会社が損害を被り、金融機関に対して返済を行うことができなくなった場合には、当該取締役は金融機関に対して損害賠償義務を負うことになります。

取締役の第三者責任の類型としては

  1. 放漫経緯により債権者に対して弁済を行うことができなくなった
  2. 弁済の見込みがない契約を締結されたことにより損害を被った
  3. 支払見込みのない手形を濫発したことで支払いを受けることができなくなった
  4. 取締役会の構成員としての監督,監視義務違反により損害を与えた

等があります。

また、取締役が株式や社債を募集する際の重要事項について虚偽の通知や募集のための説明資料の虚偽記載、計算書類や事業報告の虚偽記載、虚偽の登記、虚偽の公告等を行った場合、それを信じて損害を被った第三者に対して損賠賠償を義務を負うことになりますが、このとき取締役が無過失であることを立証できなければ損害賠償義務を負うという重い責任を負っています。

取締役の責任の一部免除

会社法では取締役の責任について一部免除することができると定められています。
東証上場企業においては2人以上の社外取締役を入れることが求められるようになましたが、取締役の責任を危惧して社外から取締役を招へいすることが困難になる可能性があります。取締役の責任の一部免除は、このような不都合を回避することを一つの目的として設けられた制度です。
なお、全ての株主の同意がある場合には取締役の会社に対する責任のうち一定のものについては全て免責とすることもできます。

取締役は、株主総会の特別決議により、以下の金額を超える損害賠償義務の免責を受けることができます。

  • 代表取締役====会社から支払われた役員報酬、賞与等6年分
  • その他の取締役==会社から支払われた役員報酬、賞与等4年分
  • 社外取締役====会社から支払われた役員報酬、賞与等2年分

それぞれの取締役は、上記した会社から支払われた財産上の利益にストックオプションにより受けた財産上の利益を上限として免責を受けることができます。

なお、取締役の責任の一部を免除する株主総会の特別決議を受けるにあたっては、責任の原因となった事実及び賠償責任を負う額、責任を免除することができる額の限度及びその算定根拠、責任を免除すべき理由、免除額を開示しなければなりません。
また、取締役が責任の一部免除に関する議案を株主総会に提出するには、監査役設置会社においては監査役全員の同意、三種委員会設置会社においては監査委員全員の同意が必要になります。

取締役の責任の一部免除は、前記した株主総会の特別決議だけでなく、監査役設置会社または三種委員会設置会社等において定款に一部免除に関する定めがあるときには取締役会の決議により決定することができます。
また、定款に取締役と会社との間で責任限定契約を締結することができる旨の規定がある場合には契約の締結により責任の一部免除を受けることができます。

取締役に対する責任追及

取締役が任務懈怠により会社に損害を与えた場合、会社が当該取締役に対して損害賠償を求めることが原則となります。
しかし、会社にとって取締役は内部の者にあたるため、会社の取締役に対する責任追及は期待できません。
そこで、会社法では、株主が会社に代わり取締役の責任を追及することを認めています。
これが株主代表訴訟です。

  1. 株主代表訴訟を提起するためには、訴え提起の6ヶ月前から引続き株式を保有していること
  2. 株主が会社に対して書面等により取締役の責任を追及するように求めること
  3. 会社が株主の求めにもかかわらず60日以内に訴えを提起しなかったこと

株主は、取締役が会社に対して負う責任全てにつき、株主代表訴訟により取締役の責任を追及することができると考えられています。

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