コーポレートガバナンスは、企業が直面する経営リスクを把握し、それを回避し、あるいは備えることを目的とするルールです。
それでは、企業においてはどのように経営判断が行われているのでしょうか。
経営判断は、一般的に以下の4つの要素に基づいて行われています。これは、経営判断の四要素と呼ばれています。
- ルール
- 数字
- ヒト
- ビジネス
ルール
「ルール」が存在する理由は、社会全体が正しい方向に進むための基準となるものです。
なお、ここでいう「ルール」は、法令等にとどまらず、定款、規則等の会社で定められた規定、業界や地域の慣習、社会常識を含みます。
ルールが社会全体を正しい方向に導く基準であるならば,それを守り,活用することは経営力を増大させることになります。 他方,ルールを守らない企業は,この社会において存在する価値すらありません。
数字
企業において数字は、事業活動を積み重ねた結果を示すものです。
そして、企業における数字は、「カネ」に直結するものであるだけに、正確に理解しておく必要があり、経営判断を行う上で非常に重要な判断要素となります。
ヒト
「ヒト」は、企業活動の源泉となるものであり、企業において最も重要な要素です。
十分な組織が整っていない企業においては、「ヒト」の力に依存する度合いが高く、特に重要になります。
企業は、人と人のつながりによって様々な活動をしています。
ですから、ここでいう、「ヒト」は、従業員に留まらず、経営者、株主、取引先、金融機関、広く社会の構成員も含みます。
ビジネス
「ルール」、「数字」、「ヒト」が整っていたとしても、日夜行われる「ビジネス」が上手くまわっていなければ事業を行うことはできません。
そして、この「ビジネス」は、経済状況や社会環境等により常に変化します。
企業の継続性を考える上で、「ビジネス」の要素は最も重要であると言っても過言ではありません。
「ビジネス」は、「ルール」、「数字」、「ヒト」と対立関係にたつことがあります。
「ルール」ばかりを守っていては変動の激しい現在において最適のビジネスを行えない可能性があります。
しかし、「ルール」を破った場合には,事業の存続すらままならない事態を招来する可能性もあります。
また、「数字」は,企業の過去の実績を示すものであるため、これのみに拘泥すると柔軟なビジネスを展開することはできなくなります。
しかし、過去の実績を無視した経営が事業の破たんをきたすということも経験上明らかです。
さらに、「ヒト」にばかり気を取られていては、最適のビジネスを選択する機会を失うことがあります。
「ビジネス」は、「ルール」、「数字」、「ヒト」とのバランスを図ることが必要になるのです。
そして、経営者は、これらの経営判断の四要素を把握し、経営判断を行っていく必要があるのです。
多くの人材を抱える大企業であれば、各部署においてこれらの分析を行い、経営者に情報提供を行い、それらの情報に基づいて経営判断を行えばよいのです。
しかし、中小企業においては、一人の経営者が経営判断を行っていることが多いと思います。
このような中小企業において、大企業と同じように、多くの人材を用いて情報収拾を行い、その情報に基づいて経営判断を行うことなどできません。
コーポレートガバナンスを導入することにより、経営の各要素が可視化され、情報の往来が活発化します。このことで、経営者は、適切な経営判断を行うことができるようになります。
そして、経営の各要素が可視化され、情報の往来が活発化することで、将来に向けた経営の方向性も明確になります。
将来に向けた経営の方向性が定まり、それに向けた適切な経営判断がなされると、自ずと企業の継続性は維持されるのです。
コーポレートガバナンスを導入する意義は、まさしくこの点にあるのです。