中小企業の経営者は、全てといってよいほど、会社の連帯保証人となっていますし、自宅に抵当権を設定しているという場合も少なくありません。
この結果、会社が事業を清算し返済することができない場合には、連帯保証人である経営者の方が会社に代わって返済を行わなければなりませんし、自宅に設定された抵当権が実効されるということにもなってしまいます。
しかし、清算する会社からの収入に依存している経営者の方が会社に代わって返済を行うことは不可能です。
また、事業を清算する段階では、経営者の方は私財の全てを事業につぎ込んでいますので、自宅を抵当権から守ることが不可能ですし、仮に守ることができたとしても自宅を売却して連帯保証債務を履行するように求められるだけです。
したがって、事業を清算し会社を破産させる場合には経営者の方の債務問題を解決し、経営者の方の経済的再生を行わなければなりません。
経営者の方の経済的再生の方法としては
- 簡易裁判所の特定調停を利用する方法
- 個人再生手続を利用する方法
- 自己破産手続を利用する方法
があります。
簡易裁判所における特定調停は、
- 経営者の方の負債のほぼ全てが金融機関債務の債務に限定されていること
- 経営者の方に返済に充てるべき私財がある程度存在し、返済原資を確保できること
- 金融機関等の債権者が私財による返済により残債務の免除に同意する見込みがあること
の条件が整えば行うことができます。
特定調停のメリットは、経営者の方が自己破産の手続を回避することができるところにありますが、特定調停により解決することができる場合が非常に限られていること、手続にある程度の時間を要し、調停が成立しない場合には改めて自己破産等の手続を行うことになるというデメリットがあります。
個人再生手続
個人再生手続は、基本的に債務の20%を3年間で返済することで、自宅を守ることができるというメリットが存在します。
ただし、経営者の方の債務が連帯保証債務を含めて5000万円以下であること、自宅に住宅ローンの抵当権しか設定されていないこと、住宅ローンの支払いが長期にわたり滞っていないことが条件となります。
また、この手続を利用する場合には、事業を清算した後に経営者の方が定まった収入を得る見込みがあり、継続的な返済を行うことができることが条件となります。
特定調停、個人再生手続のいずれに方法によっても経営者の方の債務問題を解決することができない場合には、残念ながら会社とともに経営者の方も自己破産の手続を行わざるを得ないということになります。
なお、住宅の問題については、住宅ローンの支払いが困難になった場合と共通した問題がありますので、住宅の問題について詳細な内容を確認されたい方は以下を参照してください