弁護士視点で知財ニュース解説

営業秘密は流出の危険だけでなく,流入の危険もある!?

先日,営業秘密の保護要件についての記事を書きました。
今回は,営業秘密の危険性について書きたいと思います。

一般的に,営業秘密の対策というと,ライバル会社に自社の営業秘密が流出しないようにする対策であると考えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。

もちろん,営業秘密が漏洩すると,その営業秘密を用いた営業の利益が減少するといった損害を被ることがあるため,営業秘密の漏洩を防止する対策は企業にとって極めて重要なものです。

しかしながら,営業秘密の流入があった場合,営業秘密の流出以上の損害を被る可能性があります。
ところが,営業秘密の流出防止対策を行っている企業に比べ,営業秘密の流入を防止する対策を行っている企業はそれほど多くはないのではないでしょうか。

営業秘密の流入問題は,昨今,情報のコンタミネーションという問題として認識されています。
コンタミネーションとは,直訳すると「汚染」という意味ですが,知財の世界では,他社の営業秘密などの情報が自社の情報に混入してどの情報が自社の固有の情報であるのかが不明となってしまう状況を意味します。

s049.jpg他社の営業秘密が自社に入ってくる例としては,他社の技術者が転入してきた場合のその技術者の知識が営業秘密として自社に入ってくるケースや他社と共同で事業をしている場合に他社から営業秘密を開示されるケースなどが挙げられます。
特に,転入者が前の会社の営業秘密を開示する場合には,転入者は営業秘密の開示だと自覚せずに行うことも多く,そのような場合,営業秘密の流入に気がつかないことも多いでしょう。

他社の営業秘密が流入すると何が問題かというと,他社の営業秘密が不正競争防止法で保護される場合,他社がその営業秘密の使用を差し止めることができるということです。
したがって,他社から転入してきた技術者を中心にプロジェクトを立ち上げ,その技術者のアイディアを基礎として何年も掛けてようやく商品の販売に漕ぎ着けたにもかかわらず,その技術者自身のアイディアであると思っていたものが他社の営業秘密であれば,その営業秘密の使用を差し止められてしまうということです。そして,その営業秘密がコンタミネーションしてしまい,プロジェクトと切り離すことができない状況あれば,そのプロジェクト全体を差し止めることが事実上可能となってしまい,その結果,プロジェクトに投資した時間と費用が水の泡となってしまします。

仮に,他社の営業秘密が不正競争防止法で保護されない場合には,差止請求を受けることはありませんが,損害賠償請求を受ける可能性はあります。
例えば,転入してきた従業員が,秘密保持義務に違反して前の会社の情報を開示してしまい,その開示行為に会社が関与したと認定される場合には,共同不法行為として損害賠償請求を受ける可能性があります。

また,従業員の引き抜きが他社の情報の開示が目的であったとの認定がされると,引き抜き行為について不法行為として損害賠償請求を受けることも考えられます。

このような事態をさけるためにも,営業秘密の流入についても十分な対策を行っておく必要があります。
もっとも,どのような対策を採るかは,会社の規模,業務内容,会社の施設・設備の状況など様々な要素を考慮して判断せねばならず,その判断は極めて専門的な判断となります。
また,このような対策は厳重にすればするほど,業務活動を拘束するものであり,一定の費用も必要となるため,リスクとコストをどのように調整するかという問題も生じます。

このように,営業秘密対策は非常に難しい判断を強いられるものですが,この機会に営業秘密対策を考え直してみてはいかがでしょうか。

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