弁護士視点で知財ニュース解説

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国境をまたぐ知財取引価格のルール化

日米欧の主要国は,複数の国に子会社を有する企業がグループ内で知財取引をする際の価格について,共通のルールを導入することを合意する方向で調整していることが判明しました。

技術情報等の知財は情報であり,その経済的価値は,当該技術情報等を使用することにより将来得ることができる利益の額を現在価値に割戻して(DCF法)によって算定されます。

しかし,当該技術情報等が将来得ることができる利益の額は,当該技術情報等が有する収益力をベースに,競合技術や代替技術による陳腐化までの年数,技術以外のところで行われる企業努力,市場環境など,さまざまな要因で上下します。

このような知財の経済的価値の不確実性を利用して,税率の低い国に低価格で知財を移転し,意図的に納税金額を減少させるということが行われており,先進国各国において問題視されてきました。

今般,知財の経済的価値の不確実性を利用した節税に対処するため,先進国各国において,知財の経済的価値について,共通のルールを設ける方向で調整が行われることになりました。

但し,技術情報等が有する収益力を確定することは当然のこと,陳腐化までの年数,企業努力や市場環境等の外部的要因を確定することは非常に困難ですし,知財の分野によっても,これらは全く異なります。
このことから,知財の経済的価値をルール化するといっても容易なことはではありません。

また,知財に追加開発が加えられた場合には,価格算定を行ったベースそのものに変更を加えることになりますので,知財の経済的価値の変更要因にもなり,知財の経済的価値を正確に把握するのは,非常に困難ではないかと思います。

現在,検討されている内容は,グループ内取引価格の決定方法や関連会社の財務情報を各国の税務担当者に提出する義務を課すというものです。
グループ内取引価格の決定方法や関連会社の財務情報を提出することは,情報管理が未熟な国において,当該国の競業企業に情報が漏えいするリスクを抱えることを意味しています。

国際的な租税回避に対する対策が必要であることは理解できるものの,本制度により,知財分野における租税の公平化が図られるのかという点については,疑問の余地があるというほかありません。

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