弁護士視点で知財ニュース解説

「ヴァイオリンのためのソナチネ」,「ピアノのためのレクイエム」は誰のもの?

佐村河内守さんのゴーストライターを務めていた作曲家の新垣隆は,「子どもたちのために書いた曲だから」との理由で,「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」については自分の名義にしたいと訴えているようです。」
他方,佐村河内さんは、自分も構想などの形で作曲に関わっていたので「共作」であると主張しているそうです。

両者の主張を著作権法に基づいて検討するとどのようになるのか検討してみましょう。

著作権法14条は,著作物の公衆への提供の際に、その氏名として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定すると規定されています。

「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」は,佐村河内さんが著作者と推定されます。

ところが,著作権法は,あくまで法律上推定を行うだけであって擬制するものではありませんので,当事者の主張によって法律上の推定は覆されます。

そして,当事者である佐村河内さんと新垣さんは,稲垣さんが「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」を創作したことを認めていますので,両曲の著作者は稲垣さんであるということになります。

なお,佐村河内さんは,「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」については,構想に携わったと主張し,共同著作者であることを主張しているようです。

佐村河内さんが,「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」の作曲にあたりどの程度の関与を行ったかについては不明ですが,単に,コンセプトやアイデアを提供しただけであり,作曲を行いそれが曲に反映されていない限り,共同著作者となることはありません。

そして,著作権法では,楽曲の著作者は,複製権,演奏権,公衆送信権(送信可能化権を含む。),譲渡権,貸与権,翻案権という著作財産権を有する上に,公表権,氏名表示権,同一性保持権の著作者人格権を有します

仮に,佐村河内さんが楽曲の一部の創作にも関与していないということであるならば,「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」の著作財産権,著作者人格権は,稲垣さんのみに帰属することになります。

そして,法的にみた場合,著作者であるか否かは,楽曲が創作される過程で,誰が,どのような創作行為に関与したかによって決定されるのであり,当事者の話し合いにより決定されるものではありません。
仮に,著作者でない人を著作者とする合意を行ったとしても,法的には,その人は著作者ではなく,真の著作者がその人に著作権(財産権と人格権の両方を含む。)を行使することができなくなるという程度の効果が生じるだけであると考えます。

ところで,稲垣さんは,佐村河内さんのゴーストライターだったことを謝罪した2月の記者会見で、「著作権はすべて放棄したい」と話していましたが,この稲垣さんのコメントが著作権法にどのような影響を与えるのか検討します。
そもそも,著作権法には,著作権の放棄に関する規定が存在せず,放棄という制度が存在しません。
よって,「著作権を放棄したい」というコメントによって,稲垣さんの著作財産権が著作者人格権が影響を受けることはありません。

ただし,稲垣さんは,マスメディアを通じて多くの人に対して,「著作権を放棄したい」と宣言しています。

これを聞いた多くの人は,稲垣さんは,「自らの創作した楽曲については著作権を行使する意思がないものと考え,稲垣さんの楽曲を使用する可能性があります。

これを前提に,稲垣さんが著作権を行使した場合には,民法の信義誠実の原則により,あるいは権利濫用にあたり権利行使が認められないということも十分に考えられます。

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