弁護士視点で知財ニュース解説

弁護士視点で知財ニュース解説

攻防知的財産

日本経済新聞で3回にわたって連載されている「攻防知的財産」において,「知財は企業経営だけでなく,競争と市場のあり方も根底から変えつつある」と紹介され,それを裏付ける事例をいくつか紹介しています。

「特許は原材料」と銘うち,スマートフォンの価格に占める特許ライセンスフィーの割合が3割に達するとの分析結果,標準技術に作用されている無線通信に関する特許を有するクアルコムの年間売上の3分の1は特許ライセンスフィーであるという事例が紹介されています。

また,知財の侵害により多額の賠償金が課されるリスクについて,デュポンのモンサントに対する17億ドルの賠償,後発医薬品メーカのファイザーに対する21億ドルの賠償,半導体メーカーのカーネギーメロン大に対する15億ドルの賠償の事例を紹介しつつ,グーグルが125億ドルで買収したモトローラーを,ほとんどの特許を手もとに残した状態でレノボに譲渡した事例も特許紛争を想定してのことであったと紹介されています。

通信技術の標準化については,長い間,日本も官民を挙げてITUなどの国際機関において日本の技術が標準技術に採用されるべく努力を行ってきましたが,直接通信に関わる企業を中心に活動してきたところがあり,日本の存在感がいまいち我々のもとには届いてきません。

今回の記事では,カメラやプリンターを製造するキャノンも通信技術の標準特許の重要性を認識していることが紹介されています。

以前であれば通信技術とは関係のなかったカメラ,プリンターに留まらず,今後は自動車等も通信技術と不可欠の製品になることが予想されますので,日本の製造業をあげて通信技術の標準化に取り組むことが期待されるところです。

多額賠償の事例は,アメリカにおける特殊事情ととらえられがちなところがありますが,任天堂がイギリスでフィリップス社から「wii」が同社の特許権を侵害すると訴えられた事件においても特許権侵害の判断が下され,今後,損害賠償額の算定に入ると報道されているところです。

特許権侵害で多額の損害賠償を求められることになるのは,アメリカにおける特殊な事情という理解では済まされない時代になってきています。

今一度,事業活動における知財の重要性を確認する上で,非常に興味深い記事であると思います。

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