弁護士視点で知財ニュース解説

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休眠特許の活用

2014年6月29日付日経新聞によると,経済産業省が,休眠特許の活用を進める対策に乗り出し,「知的財産推進計画2014」においても休眠特許の活用策を盛り込むようです。

国の委託研究で得た特許を企業が利用していない場合、希望する別の企業にライセンスを与えるよう要請し,民間企業が独自に取得した特許で未利用のものは,有償または無償で開放するよう促す内容となるようです。

休眠特許とは,特許として登録しているものの登録の対象である発明が全く実施されていないものをいい,国内の企業などが保有する約135万件の特許のうち,約半数が休眠特許と言われています。
特に,年間出願件数が圧倒的に多い電機メーカーに休眠特許が多いと言われています。

休眠特許は,経済的に価値がないものとして海外企業などにまとめて譲渡されるようなことになると,技術流出のおそれがあることから,休眠特許を活用する取組みは,以前から行われています。

例えば,産業革新機構は,2013年7月25日,電機メーカーが活用できない「休眠特許」を買い取るファンドに約30億円を出資し,ファンドは集めた特許を新興国企業などに貸し出して収益を得る事業モデルを発表しています。
なお,産業革新機構は,三洋電機で特許管理に携わった吉井重治氏が社長を務めるアイピーブリッジとともに出資し,当初は電機メーカーから携帯電話などに関する5000件の特許を取得し、将来的には300億円規模のファンドを目指すと報道されていました。

このようなファンドは,休眠特許を買い取り,技術を活用し新しい財を創造するだけでなく,特許取得に携わった技術者を複数の企業から集めて事業化する役割も担うことが期待されています。

さらに,休眠特許活用への取り組みは,休眠特許を多く抱えていると言われる電機メーカ単体によっても徐々に進められているところです。

そもそも,登録した特許が実施されてない理由としては,自ら特許を実施することによって収支をとることができない,あるいは利益を確保することができても少額に留まるからです。
しかし,休眠特許は,大企業では収益が得られないものの、中小企業などでは採算がとれることがあります。

ですから,中小企業が大企業の休眠特許を積極的に活用し,それにより創造される財というものは計り知れないものと期待しています。

但し,休眠特許といわれるものの中に,保有企業が実施しないことに重要な価値を見出している特許があります。
いわゆる防衛特許がそれです。

防衛特許は,中核技術の周辺技術に関して,他社が取得する可能性のある特許を先に取得しておき,自社製品の優位性維持するための特許です。
このような防衛特許は,企業としても第三者に使用させることはできません。

仮に,休眠特許の開放を求められた場合,企業としては,当該特許は防衛特許として機能していると回答してしまうのが人情です。

休眠特許を活用するにあたっては,防衛特許と純粋な休眠特許との線引きをどのようにして行うかが,重要になるといえるでしょう。

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