弁護士視点で知財ニュース解説

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「にこ☆サウンド#」事件判決

札幌地方裁判所は,平成26年7月16日,音楽などの無料配信サイト「にこ☆サウンド#」の運営者に対して,懲役3年,執行猶予4年,罰金500万円の有罪判決を下しました。

「にこ☆サウンド#」のような音楽配信に関する寄生型サイトの運営者が,著作権法違反で有罪判決を受けるのは初めてのことだそうです。

「にこ☆サウンド#」の特色は,利用者が,このサイトにニコニコ動画の動画掲載ページURLを入力するだけでニコニコ動画のコンテンツをMP3に変換し,ダウンロードが可能となる点にあり,利用者は,ニコニコ動画の対象著作物を無償で入手したり,交換することができるという点にありました。
なお,「にこ☆サウンド#」利用者は20万人程度で,一日あたりの交換ファイル数は約1500件であったと言われています。

そして警察の調べによると,このサイト運営者は,広告収入としてこれまでに1億3000万円もの収入を得ていたようです。

このサイトの運営者は,営利を目的として,公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し,これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器)を,著作権の侵害となる著作物の複製に使用させたとして起訴されたと思われます。

「にこ☆サウンド#」のようなサイトは,著作権法で定められている公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器に該当します。
そして,このような自動複製機器を著作権の侵害となる著作物の複製に使用させた場合,5年以下の懲役,500万円以下の罰金(両方の刑を科すことも可能)とされています。

今回の判決は,罰金の部分については最高刑となっており,懲役の部分でも執行猶予付判決を下せるギリギリの内容となっています。

このことから,今回の判決は非常に厳しい判決といえ,多くの人に著作権侵害を繰り返し行わせていたこと,それにより多額の収入を得ていたことから下された判決であると思います。

他方で,1億3000万円もの収入を得ていて500万円の罰金でよく,刑務所に入ることもないと受け取る人も少なくないと思います。

その意味で,著作権法が定める罰金刑の上限額が現在の著作権侵害,あるいはそれを助長する行為に対応できていないと言えなくもありません。

近時,不正競争防止法の営業秘密に関する不正競争行為の罰金刑の上限を高額化することについては議論されていますが,著作権侵害の罰金刑の上限を高額化するという議論が行われていません。

「にこ☆サウンド#」のような広告収益を目的とした寄生型サイトが多く開設されており,このようなサイトによる著作権侵害行為の助長が問題になっています。

著作権法の罰金刑の上限額は必ずしも十分であるとはいえない状況で,このような犯行を抑止していくためには,著作権管理者が,重ねて損害賠償の請求を行っていくという姿勢を示す必要があるのではないかと考えています。

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