弁護士視点で知財ニュース解説

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著作権保護期間延長に反対する国際共同声明

米国NGO電子フロンティア財団,クリエイティブ・コモンズ,ウィキメディア財団,北米研究図書館協会を始めとする各国の図書館団体,インターネット・アーカイブ,国際消費者機構など有力35団体は,平成26年7月9日,TPPにおける著作権の保護期間の延長に反対する共同声明を発表しました。

日本の団体では,クリエイティブ・コモンズ・ジャパン,thinkC,一般社団法人インターネットユーザー協会,未来基金の4団体が声明に参加しています。

共同声明は,多数のシャーロック・ホームズのスピンオフ作品が制作されている例を挙げて保護期間が経過した著作物(パブリック・ドメイン)が新たな著作物の創作を促していることを説明しつつ,パブリック・ドメインが多くの人に対して安価で知識などを提供していること,著作権保護期間の延長は少数の大企業に対して利益をもたらす結果にしかならないことを理由に,保護期間の延長が大きな社会的ロスとなることを訴えています。

著作権の保護期間については,保護期間を延長してきた米国においても議論されているところであり,平成25年3月にはマリア・パランテ著作権局長が,「登録作品に限り死後70年まで保護し,非登録作品は死後50年の経過をもってパブリック・ドメインとする」という保護期間の部分短縮を米国議会で提案し,米国議会においても著作権の保護期間の見直しが議題となり,平成26年7月15日のヒアリングでは,複数の参考人が部分短縮に前向きな意見を述べています。

TRIPS協定においては,著作権の保護期間の最短期間が50年とされていますが,TPP交渉においては最短期間を70年とする交渉が行われており,著作権保護期間延長に反対する日本が孤立した状況にあると報道されています。

このような交渉状況を受けて,今回,多くの団体が国際共同声明の形で保護期間延長反対の意思を示したものと思われます。

著作権保護期間の問題は古くから国際問題となっており,今回のTPP交渉でも懸案の一つとなっています。

著作物創作のインセンティブを確保するためには著作権者に一定期間の保護を与える必要があります。

しかし,過度な保護は,多数の者の費用負担のもと特定の企業が利益を独占することになりますし,新たな創作の妨げになりますので,民間レベルでも大いに議論して頂きたいところです。

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