滋賀県野洲市がインターネット上から有料イラストを無断で複製し,市の情報誌に掲載し,イラストの貸出会社から使用料などを請求されている事件で,市の担当職員は,「無料だと思っていた。認識不足だった。」と話しているそうです。
では,市が使用したイラストが実際に無料で配布されていた場合,市の行為は著作権侵害とはならないのでしょうか。
今回の事件では,市の行為は複製権侵害になるところ,複製権侵害を定める著作権法第21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する」と定めています。
この条文は,著作物を著作権者の同意なく複製する行為は複製権侵害となると解釈されるものであり,無料で配布している著作物を複製しても複製権侵害とはならないと解釈することはできません。すなわち,著作物の利用にあたり利用料を支払う必要があるか否かと,著作物の利用にあたり事前の同意が必要か否かとは全く別の問題であるということです。
なお,著作物の利用の対価を要求しないという態度から,著作物の利用を許容していると解釈できる場合もあります。そのような場合は,著作権者の同意により著作権侵害が成立しないことになりますが,これは契約あるいは意思表示の解釈の問題であって,著作権法の解釈の問題ではありません。
著作権法には,様々な支分権が定められており,支分権の内容である法定利用行為ごとに著作物の利用を許諾することが可能です。
そして,著作物の利用を許諾された場合であっても,許諾された範囲を超える利用をした場合には著作権侵害となってしまいます。
したがって,著作権者に著作物の利用の許諾を受けたとしても,どのような利用態様の許諾を受けたかを慎重に判断する必要があります。
他方,著作権者が,著作物の利用を許諾する場合にはどのような利用態様を許諾するかを明確にして許諾する必要があります。