弁護士視点で知財ニュース解説

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ディズニー「アナと雪の女王」著作権侵害で訴えられる

日本でも歴代3位の興行収入を記録し大ヒットしているディズニーの「アナと雪の女王」ですが,この映画の予告編が「The Snowman」の著作権を侵害しているとして,製作者であるKelly Wilson氏がアメリカでディズニーを訴えました。

Kelly Wilson氏は「両作品の構成とシークエンスが酷似している」と主張していますが,ディズニーからは「両作品には違う要素がいくつもある」と反論されています。

ここで,「作品の構成」とは作品全体の流れで,「シークエンス」と個々の場面の繋がりという具合に理解していますが,要するに,ストーリ全体の流れも個々の場面のつながりも同一であると主張しているものと理解しています。

「Snowman」も「アナと雪の女王」の「オラフ」を雪だるまをモチーフにしたキャラクターで鼻はニンジンでできています。

そして,「Snowman」では,小鳥が鼻にとまり,飛び立った際に鼻が転げ落ち,4匹のウサギがスノーマンの鼻を手に入れようと狙っています。

「Snowman」は,ウサギに鼻を取られまいとして急いで拾おうとしますが,崖から鼻を落としてしまい,鼻は凍りついた湖の上に転げ落ちます。

そして,4匹のウサギは,木を並べて氷上を歩き鼻を取ろうとしますが,「Snowman」は木のスキーで崖上から一気に滑りおり,ウサギより一瞬先に鼻を拾います。

ところが,1匹のウサギの廻りの氷が割れてウサギが溺れそうになるのを,「Snowman」がウサギにニンジンを差出し,ウサギがそれにかぶりついて湖から助け上げられ,最後にウサギが「Snowman」にニンジンを返すというストーリです。

他方,「アナと雪の女王」の予告編では,「オラフ」がくしゃみをすると,凍りついた湖の上に鼻が飛んでいきます。

対岸ではニンジンが大好きなトナカイの「スヴェン」が「オラフ」の鼻を発見し,氷が張湖の上をツルツル滑りながら鼻に向かって歩いていきます。

「オラフ」も「スヴェン」に負けじと凍りついた湖の上をツルツル滑りながら歩いていき,両者がほぼ同時に鼻を掴み引っ張り合いになった結果,にんじんは湖の岸部まで飛んでいき,「スヴェン」が走って行って鼻を得ることができるのですが,「スヴェン」は「オラフ」に鼻を返してくれます。

確かに,「Snowman」も「オラフ」も雪だるまをモチーフにしたキャラクターであること,鼻がニンジンでできていること,ニンジンの鼻が凍りついた湖に落ちてしまうこと,主人公のキャラクターと相手方の動物がニンジンを先に手に入れようと努力すること,最後には主人公のもとに鼻が返ってくることは同一です。

そして,両者の動画を見ますと,感覚的には「アナと雪の女王」の予告編は「The Snowman」を参考にしているだろうなという印象を持ちます。

しかし,著作権法で保護される著作物は,抽象的なアイデアの段階で対比するのではなく,具体的に表現されたものを対比していく必要があります。

まず,雪だるまをモチーフにそれを擬人化したキャラクターとものは過去にも多く存在するため,単に雪だるまをモチーフにしたキャラクターを採用したというだけでは著作権侵害にはならず,両者のキャラクターの構成部分を詳細に比較していく必要があります。

そして,「Snowman」も「オラフ」雪だるまをモチーフとしていることから共通点は多々あり,鼻がニンジンであるという個性的な点も共通していますが,具体的なキャラクター表現の相違点がそれに勝っているとの印象を受けますので,「オラフ」が「Snowman」の複製である,あるいは翻案であると判断されるのは厳しいのではないでしょうか。

次に,ストーリですが,相対立する登場人物が氷上で獲物を奪い合うというアイデアそのものは過去に存在するストーリですので,全体的な構成が同一であるというだけでは著作権侵害になりません。

そこで,詳細なストーリー展開を比較しますと,「The Snowman」では,滑る氷上を一方は木を並べていくこと滑らずに進む,他方は滑るということを利用して木製のスキーで鼻に到達し,知恵比べを行って鼻に到達します。

他方,「アナと雪の女王」の予告編では,両者とも滑る氷上を七転八倒しながらディズニー特有のコミカルさでで鼻に到達します。

さらに,鼻を奪おうとする相手キャラクターもうさぎとトナカイで異なります。

これらの相違点が存在することを前提に,日本の裁判所が採用する緻密な判断基準を当てはめますと,日本では著作権侵害にはならないのではないかと推測しています。

しかし,今回はアメリカでの裁判ですし,原告は陪審裁判を希望すると思います。

陪審裁判になった場合に,陪審員が受ける感覚的な印象を前提にした場合には,著作権侵害の判断が下される可能性も十分にあると思っています。

被告がディズニーであること,それも「アナと雪の女王」の予告編が第三者の著作権を侵害しているかもしれないということから,本件の訴訟は注目に値するのではないでしょうか。

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