弁護士視点で知財ニュース解説

清武氏があとがきを担当した復刊本 販売差止

平成26年9月12日,東京地裁において,「会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証」(著者:読売新聞社会部・出版:新潮社)の復刊本の販売差止と171万円の損害賠償を認める判決が下されました。

販売差止となった書籍は,著者名を「読売社会部清武班」とし,読売巨人軍取締役を解任された清武英利氏のあとがきが追加されたもので,「七つ森書館」から出版されたものでした。

七つ森書館は「元の書籍の著作者は執筆をした清武氏らである。」,「読売の従業員との折衝により出版契約も有効に成立していた」と主張しましたが,判決では「読売新聞の9人の記者が会社の了解を得て職務として執筆した」として,読売の著作権を認定し,「七つ森書館が折衝していた読売の従業員に契約締結権限はなかった」として出版契約も無効であると判断されました。

また,損害賠償について,七つ森書館は,契約の有効性に疑問があると指摘されていたにもかかわらず,契約の有効性について調査確認もせず,一方的に販売に踏み切った過失があるとして,七つ森書館に損害賠償義務もあると判断されました。

読売新聞東京本社が,自社に著作権のある書籍の復刊本を無断で出版,販売されたとして,(東京都文京区)を相手取り,復刊本の販売禁止などを求めた訴訟で,東京地裁は12日,同社の著作権侵害を認め,販売禁止と171万円の賠償などを命じる本社勝訴の判決を言い渡した。

この判決では,「読売新聞の9人の記者が会社の了解を得て職務として執筆した」として,読売の著作権を認定していますが,なぜ,9人の従業員が共同執筆した書籍の著作権が使用者である読売に帰属することになるのでしょうか。

著作権法では,

  1. 法人その他使用者の発意に基づき
  2. その法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で
  3. その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの

の著作者は,原則としてその法人,その他使用者であると定められています。

なお,このような著作物のことを「職務著作」といいます。

また,著作権法では,著作者は,「著作者人格権」と「著作財産権権」を享有するとも定められています。

これらの規定により,読売は,読売の発意のもとに従業員が著作した書籍の著作権を主張することができるのです。

職務に関して創作した場合において,現在,議論されている特許法とは,全く異なる取り扱いとなっています。

特許法では,いわゆる職務発明は従業員に帰属し,法人等の使用者は,就業規則や個別の契約でそれを譲り受けることができると規定されており,譲受けた際には相当の対価を支払う必要があります。

そして,産業界からは,相当対価の支払いが経営リスクとなっているとの理由により特許法の改正を求めており,現在,職務発明が原則として法人等の使用者に帰属するという内容に特許法を改正すべきか否か議論がされているところです。

今回の特許法改正に関する議論は,特許法の根幹にかかわる問題に関する議論ですので注視していく必要があります。

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