「姫路おでん」という地域団体商標を保有する「姫路おでん協同組合」(正組合員の市内食品会社25社,市内飲食業者56店によって構成)が「姫路おでん」のブランドイメージを守るための取組みを行っているようです。
B級グルメが競う「B‐1グランプリ」が3年前に姫路で行われたことで,「姫路おでん」の認知度が高まり,商標の不正使用が増加したようです。
「姫路おでん協同組合」に加盟することで「姫路おでん」という地域団体商標の使用が認められるのですが,組合に加入することなく「姫路おでん」という言葉を使用してサービスの提供を行っている店舗が姫路市内に留まらず,近年では東京,大阪などの大都市圏でも不正使用例が認められるようです。
店舗における飲食の提供は,商標法上では,商品の販売ではなく役務の提供にあたります。
そして,役務の提供にあたり商標が定める使用には以下のものがあります。
- 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
- 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
- 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
- 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
- 役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為
例えば,メニューに記載する行為,壁などに張り紙をする行為などは,どのような種類の食べ物を提供しているか示しているだけで,上記に示した商標的使用にあたらないのではないかという反論も予測されるところです。
しかし,おでんを提供するのであれば「姫路おでん」と記載する必要はなく単に「おでん」と記載すればよいのです。
そして,姫路独特のショウガじょう油をかけたり,つけたりして食べるおでんを提供していることを示したいのであれば,その旨をメニュー等に記載する方法があります。
ですので,上記した反論は,「姫路おでん」という表示を使用する言い訳にはなりません。
地域団体商標を意味のあるものとするためには,地域ブランドのブランドイメージの維持向上を図ることと,第三者が登録商標を無断で使用することにより商標の稀釈化を防ぐところにあります。
姫路おでん協同組合では,JR姫路駅前で無断で「姫路おでん」という表示を使用する居酒屋など11店を訪ね,加盟を求める文書を手渡して回ったとのことのようです。地域団体商標については,このような地道な努力が必要になります。