弁護士視点で知財ニュース解説

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福岡県公共嘱託登記土地家屋調査士協会と福岡市公共嘱託登記土地家屋調査士協会の戦い

公益社団法人福岡県公共嘱託登記土地家屋調査士協会(福岡市中央区)は,登録商標である福岡県公共嘱託登記土地家屋調査士協会に類似する商標を使用されたとして,一般社団法人福岡市公共嘱託登記土地家屋調査士協会(同)に対して,一般社団法人福岡市公共嘱託登記土地家屋調査士協会の名称使用の差止めと,損害賠償を求める訴訟を福岡地方裁判所に提起しました。

一般社団法人福岡市公共嘱託登記土地家屋調査士協会は,公益社団法人福岡県公共嘱託登記土地家屋調査士協会の理事であった男性によって設立されており,事務所も福岡市中央区内で200mも離れていません。

そして,両協会とも,公共事業に伴って地方自治体などが行う不動産登記手続きの代理などを行っています。

二つの表示は,非常に酷似しており,表示を使用している役務も同一です。
このことから,当然に商標権侵害が認められるようにも思えます。

ところが,土地家屋調査士法上では,「公共嘱託登記土地家屋調査士協会」という制度が設けられており,かかる制度を使用する場合には,「公共嘱託登記土地家屋調査士協会」という名称を使用することになります。

この結果,名称に付するにあたり自由に決定することができるのは,本件では「福岡県」と「福岡市」という部分になります。

そして,「福岡県」や「福岡市」は,地方自治体の単位や地域を示す名称であり,本来であれば誰もが自由に使用することができる名称です。

また,公共嘱託登記土地家屋調査士協会の前に「福岡県」や「福岡市」という名称を付することは,その地域に事務所が所在し,当該地域において役務を提供していることを示しているだけであると言えなくもありません。

本来,商標は,その役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標の登録は認められず,本件で登録されている商標が本来であれば登録されるべきではない商標であったと解釈される可能性があります。

仮に,本来登録されるべきでなかった商標については特許庁に対して無効審判の申立てを行なことができ,訴訟においても特許庁において無効にされるべき商標であるとの理由で無効の抗弁を主張することが認められ,無効の抗弁が認められますと商標権者の請求が認められないということになります。

本件は,商標法的には非常に興味深い事件であり,今後も見守りたいと思います。

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