弁護士視点で知財ニュース解説

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職務発明 制度見直しの方針案

特許庁は,平成26年10月17日,「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会」において,会社に一定水準の報奨を支払う仕組みの整備を義務付けた上で,職務発明を会社に帰属させる向で制度を抜本的に見直す方針を固めました。

制度見直しの方針案としては,

  1. 従業者等に対して,現行の法定対価請求権又はそれと同等の権利を保障する。
  2. 政府は,法的な予見可能性を高めるため,関係者の意見を聴いて,インセンティブ施策についての使用者等と従業者等の調整(従業者等との協議や意見聴取等)に関するガイドラインを策定する(ガイドラインは,企業ごとの創意工夫が発揮されるよう,企業の自主性を尊重し,業種ごとの研究開発の多様な実態,経済社会情勢の変化を踏まえたものとする)。
  3. 職務発明に関する特許を受ける権利については,初めから法人帰属とする。

1に示された方針は,職務発明に関して会社が譲受ける規定が存在する会社においては,現行制度と大きな変更がないことを示しています。

2については,今回の特許法改正により産業界に混乱が生じないように,特許庁において一定の指針を提示することを意味しますが,「業種ごとの研究開発の多様な実態,経済社会情勢の変化を踏まえたもの」について,どの程度具体的なガイドラインを示すことができるのかを注視していく必要があります。

また,今回の制度見直し案では,以下の点を考慮した柔軟な制度とするとされています。

  • 従業者帰属を希望する法人(大学・研究機関等)の不利益とならない。
  • 職務発明に関する適切な取り決めのない法人に対し特許を受ける権利が自動的に帰属することで,所属する発明者の権利が不当に扱われないものとする。

つまり,職務発明を従業員の帰属とする選択肢を会社に残すこと,職務発明に関する適切な取り決めのない会社が職務発明を取得することで,従業員が不利益を受けることができないように配慮するとされています。

この「適切な取り決めのない」というのは,現在の特許法による定めを前提としているものだと思われ,職務発明規定を設けるにあたり従業員が参加し,従業員の意見が反映されていること,職務発明規定に基づき対価を決定する過程において従業員が意見を述べる機会が提供され,決定された対価に対する不服を申し立てる機会,不服を申し立てた際の手続が定められていることを意味しているのだろうと考えています。

制度見直しに関する具体な案は,今後,詳細なものが示されていくことになるでしょうから,注視していく必要があるでしょう。

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