弁護士視点で知財ニュース解説

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STAP細胞に関する特許出願の手続は継続

理化学研究所は,平成26年10月24日,STAP細胞作製法に関する発明についてPCT出願していたものについて,複数の国で国内手続の移行を行ったと発表しました。

PCT出願は,特許協力条約(加盟国140か国以上)に基づく国際出願の方法であり,多数の国で特許権を取得した場合に行われる方法の一つです。

PCT加盟国の一国に出願しておけば,この出願日がPCT加盟国全ての国(140か国以上)における出願日として取扱われ,最初に出願した日から30ヶ月の期限が満了する前に,権利を取りたいPCT加盟国が認める言語に翻訳した翻訳文をその国の特許庁に提出すると,各国の国内手続に移行させることがきでます。

なお,理研等は,PCT出願に先立ち,米国特許法第111条(b)項に基づく仮出願を行っています。

cont_img_58.jpgこの仮出願という制度は,後に通常の出願をすることを前提として仮にする出願する制度であり,出願時にクレームを設定しておく必要はありません。なお,実施可能要件は必要とされていますので,ラボノートなどの簡単な書類で出願を行うと,後日出願の効果が否定されることになりますので注意が必要です。

仮出願を行った場合,仮出願から12ヶ月以内に通常の出願,あるいは,通常の出願への変更要求を行うと,仮出願をした日を基準に出願の効果が認められることになります。

理研等は,2012年4月24日にアメリカにおいて仮出願を行い,2013年4月24日にアメリカにおいてPCT出願を行っています。

この結果,PCT出願の国内移行手続を行う期限は,2014年10月24日ということになります。

理研は,期限前に国内手続に移行しておき,期限に合わせて発表を行ったことになります。


STAP細胞の作製方法に関する発明は,各発明者が所属する理研,米ハーバード大(付属の病院),東京女子医大の共同出願により,PCTに基づき米国に対して特許出願が行われていました。
この関係で,出願の取下げを行うにあたり,米ハーバード大,東京女子医大の同意を取り付ける必要があった関係で,理研の動向が注目されていました。
理研は,国内手続に移行した国を明らかにしていませんが,STAP細胞作製法の効果の有無を確認することができない段階で,米ハーバード大,東京女子医大の同意を取り付けることは困難であると判断したのかもしれません。

今後は,調査によりSTAP細胞の存在を確認することができなかった場合に,特許出願手続をどうするのかについて問題になります。

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