弁護士視点で知財ニュース解説

「ハイスコアガール」刑事手続に対して意見表明

東京大学名誉教授中山信弘氏,北海道大学大学院法学研究科教授田村善之氏ら多数の研究者や,元知的財産高等裁判所判事三村量一氏(現弁護士)らの実務家は,平成26年12月22日,他社のゲームに登場するキャラクターを無断使用していたことで,作者やスクウェア・エニックス社員ら16人が書類送検された事件について,「著作権侵害の成否が明らかでない事案について刑事手続が進められることに反対する」とする声明を発表しました。

今回の声明は,「著作権侵害に係る刑事罰・刑事手続は,典型的な海賊版の事案等,明らかな著作権侵害行為が行われている事案であり,かつ民事訴訟では十分な権利行使ができない状況においては,実効性の点で重要な意義を有するものである。」ことを前提に,著作権を巡る紛争では侵害の成否が「微妙」な事案が少なくなく,民事裁判においても第一審,第二審,上告審とで侵害の成否の判断が分かれることがしばしばあること,過去の刑事事件においても「微妙」な事案につき,最終的に無罪とする判決が確定した裁判例がある(仙台高判平成14 年7月9日判時1813号150頁〔ファービー人形〕,最決平成23年12月19日刑集65巻9号1380頁〔Winny〕)ことを考慮し,「『ハイスコアガール』内でのゲームのキャラクターの利用態様については,著作権侵害の要件としての類似性が認められない可能性,また適法な引用(著作権法32条)に該当する可能性等があり,著作権侵害が明確に肯定されるべき事案とは言い難い。」ことから,刑事手続による対応が適切ではないという内容になっています。

一連の報道によると,スクウェア・エニックスは,他のゲームのキャラクターの使用につき交渉を行っていたようですが,交渉が決裂して今般の刑事事件に発展したようです。

他方,スクウェア・エニックスは,著作権侵害が行われていないことの確認を求める民事訴訟を提起しており,侵害の事実について戦っているところです。

知的財産の分野に限らず,民事紛争の過程で刑事手続が並行する場合がありますが,民事手続を有利に進めるために刑事手続が利用されることが少なくありません。

著作権に関する紛争は,憲法が保障する表現の自由が関わる問題であることから,刑事手続が行われることで表現の自由が委縮するという影響についても考慮する必要があることは確かです。

但し,一部報道によると「ハイスコアガール」においてはキャラクター使用の許諾を得ているかのような表示が行われていたとの指摘がありますし,コミックという商業的側面を有し純粋に文化的な表現に関する問題ではないという側面があることも考慮する必要があります。

本件刑事手続の是非については,研究者や司法関係者の意見だけでなく,多くの方の意見を前提に,その是非が論じられるべきであると考えています。

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