弁護士視点で知財ニュース解説

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「「湯〜トピア」は商標侵害 静岡県函南町が敗訴

東京地裁は,平成27年2月20日,静岡県函南町に対して,同町運営する温泉施設の表示「湯〜トピアかんなみ」を使用する行為は商標権の侵害にあたるとして,同町による「湯〜トピアかんなみ」の使用差止と1200万円の損害賠償の支払いを命じました。

本件訴訟は,山梨県甲斐市の温泉施設運営会社「湯〜とぴあ」が,静岡県函南町が使用する「湯〜トピアかんなみ」の使用が「ラドン健康パレス湯〜とぴあ」という商標権を侵害するとして訴えを提起したものです。

商標が類似するか否かの判断は,「外観」,「観念」,「呼称」の三つの要素を前提に,実際の取引の状況等を考慮して総合的に判断されます。今回問題となった商標のように普通文字で構成されている商標については,主に「観念」,「呼称」の二つの要素を比較することになります。

「湯〜とぴあ」の商標と静岡県函南町の標章を比較すると,「湯〜とぴあ」の商標については「ラドン ケンコウパレス ユートピア」であり,静岡県函南町の標章は「ユートピア カンナミ」であり呼称が異なるように思います。

しかし,「ラドン ケンコウパレス ユートピア」によって構成される商標の内,「ラドン ケンコウパレス」の部分は,ラドンを成分とする温泉を提供する施設という意味として理解され,商標が使用されている役務の内容を説明している部分と評価することができます。

よって,上記商標で商標の要部(核となる部分)は「ユートピア」ということになります。

他方,「ユートピア カンナミ」によって構成される標章の内,「カンナミ」の部分は地名であり役務を提供する場所を示しているものと評価されますので,標章の核となる部分は「ユートピア」ということになります。

そして,「ユートピア」という言葉は,楽園という意味を有し,快適な温泉を施設を提供しているという観念を有しており,「湯〜とぴあ」の商標の要部と静岡県函南町の標章の核となる部分を比較すると,両者の観念と呼称は同一であると評価することができます。

また,「湯〜とぴあ」と「湯〜トピア」は,外観上ひらがなとカタカナの違いはありますが,呼称と観念が同一であり,利用者が音のみを聞いた場合には区別をつけることができず,静岡県函南町の温泉施設についても「湯〜とぴあ」が経営しているかのような誤解を与える,つまり両者を混同するおそれがあるということになります。

今回の東京地裁の判断は,従来から行われている商標の類否判断を踏襲したものと評価することができます。

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