弁護士視点で知財ニュース解説

ニコニコ動画 著作権との共存の道

平成27年2月23日付日経新聞の「知財戦略フロンティア」において,ドワンゴの子会社であるニワンゴが運営する動画共有サイト「ニコニコ動画」(ニコ動)が取り組んできた著作権侵害対策の取組みが紹介されています。

ニコ動は,ユーザーが動画にコメントを付け加えることができるというもので,記事によると視聴可能な動画が1200万件,開設から約8年間で延べ4500万人を超える会員を獲得している非常に人気のある動画サイトです。

ニコニコ動画は,当初,「ユーチューブ」の動画にブラウザを重ねてコメントを付け加える方法を採用しており,記事によると,ニワンゴは「動画とコメントのサーバーを別々で,著作物を使用している動画はあくまでユーチューブのもの」と主張していたようで,同社の現在の考え方を前提にすれば,当時の主張には「無理があった」と考えているという記事が紹介されています。

ニコ動の代表的な動画として「歌ってみた」,「演奏してみた」というジャンルの動画がありますが,これはJASRAC等によって管理されている楽曲を投稿者が実際に歌う,あるいは演奏するという内容の動画で,著作者の著作権を侵害する行為となります。

ニコ動は,著作権管理者等から著作権侵害の申し出があったものについてはプロバイダ責任法に基づいて,投稿者に告知して反論の機会を与えることを前提に削除に応じていたが,管理者側からは,権利侵害の申し出がなくとも自主的に著作権侵害の動画を削除すべきであるとの要望があったようです。

ニコ動は,その後,「法律などの枠を超えて,ニコ動がある程度の監視,削除をします」,「愉快犯もおり,侵害動画かどうか分からない。作業に必要な情報を提供してください」という姿勢を対外的に示し,管理者側の要望に応える姿勢を示し,その1年半後には,事前登録したデータに基づいて著作権侵害動画を自動的に削除することができる「ライツコントロールプログラム」を改良し,動画削除の実績を対外的に示す努力を継続してきたと紹介されています。

そして,ニコ動は,平成20年4月,JASRACとの間で,JASRAC管理楽曲の包括使用許諾契約を締結し,JASRACに対して一定の使用許諾料を支払うことで,投稿者が自由に楽曲を歌う,あるいは演奏する動画をアップすることができるようになりました。

記事によると,投稿動画の宣伝効果を認める権利者も増え,任天堂もゲームを行っている様子やそれに実況を加えた動画の配信を認めた例が紹介されています。なお,テレビゲームは,最高裁において映画の著作物と認められており,ゲームを行っている様子を録画してインターネット上に閲覧可能な状態に置くと著作権侵害となります。

また,ニコ動は,日本ネットクリエイター協会(JNCA)を設立し,ネットクリエイターを対象とした著作権,税務セミナーを開催し,投稿者の法律順守の精神を涵養することにも力を入れていくことが紹介されています。

ニコ動は,この8年間で大きな市場に成長し,既存の著作物を夜中に広めていく,あるいは新たな著作物の創作を促すことで,社会において文化的に,また経済的に一定の役割を担う存在となっています。

しかし,ニコ動が歩んできた歴史は,著作権という既得権との戦い,共存の道であったと言えます。

ネットの普及により,既存の勢力を保護する法律である著作権との葛藤を行い,結果としてサービスの提供を断念せざるを得なくなったサービスが多数存在し,その中には社会に有益なサービスも少なからず含まれています。

その意味で,日経新聞で紹介されたニコ動の歴史は,新たなサービスを行う上で非常に参考になります。

なお,今回の記事では,欧米ではフェアーユースという法理の下,芸術的表現の一つとして広く認められているパロディーについても紹介されています。

フェアーユースの法理とは,?利用の目的と性格(利用が商業性を有するか,非営利の教育目的か等),?著作権のある著作物の性質,?著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性,?著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響を考慮して,フェアーユースと認められる場合には著作権の行使が制限されるという考え方です。

投稿される動画にはパロディーにあたるものも少なからず存在しますが,日本の最高裁は,日本においてパロディーを受け入れる素地は存在しないとの理由に,表現の一方法であるパロディーは翻案権や同一性保持権を侵害するものと判断しています。

日本においても,著作権を制限する一般法理としてフェアーユースの法理を導入すべきか否かについて長く議論されているところであり,ニコ動に投稿される動画を前提に,改めてフェアーユースの導入について盛んな議論が行われることを期待しています。

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