弁護士視点で知財ニュース解説

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軽井沢地ビール 商標紛争

平成8年に「軽井沢高原ビール」の商標登録を受けたヤッホーブルーイングが,平成24年に商標登録された軽井沢ブルワリーの登録商標「軽井沢浅間高原ビール」の商標登録の無効を求めた事件につき,知財高裁平成26年12月8日判決は,ヤッホーブルーイングの主張を認めて,「軽井沢浅間高原ビール」が「軽井沢高原ビール」との混同のおそれがあるとして「軽井沢浅間高原ビール」の商標を無効とした特許庁の審決を維持しました。

軽井沢ブルワリーは,知財高裁の判決が不服であるとして最高裁に上告しているようです。

そもそも,特許庁は,「軽井沢高原ビール」の登録商標があることを前提に,これに類似しない商標として「軽井沢浅間高原ビール」の商標登録を認めたわけですが,特許庁の審判手続においては登録を無効とする審決が下され,知財高裁においても特許庁の審決が肯定されました。

登録審査手続では,ヤッホーブルーイングの商標が「軽井沢高原」という地名と「ビール」という商品名とで構成されており,「ビール」には識別力が認められず,「軽井沢高原」についても弱い識別力しか認められないとして,「浅間」という山の名称あるいはその周辺の地名の有無により両商標は類似しないものと判断されたものと推測します。

しかし,知財高裁においては,両商標に共通する「ビール」には識別力がないとして,「軽井沢高原」と「軽井沢浅間高原」との比較を行いました。

そして,「『軽井沢』は,長野県東部,北佐久郡にある著名な避暑地を想起させるところ,その中心である軽井沢町の町域が,浅間山の南麓・南東斜面に広がる高原地域となっていることは公知の事実であること」,「『浅間』の語は,長野県北佐久郡軽井沢町・同郡御代田町と群馬県吾妻郡嬬恋村にまたがる著名な浅間山を想起させること」,「『浅間高原』が固有の地域,地名等を指称する語であるとする証拠はないから,『浅間高原』は,浅間山山麓一帯の高原地域程度の意味合いを有するといえる。」とし,「『軽井沢』と『浅間高原』とは地理的に隣接又は重複するのであるから,『軽井沢浅間高原』のごく自然な理解とすれば,一定の地域を異なる語で連記して場所の特定を強調するとの例に依ったものとして,『軽井沢及びその周辺の浅間山山麓に位置する高原地域』ほどの意味合いを認識させるものと認められる。」

また,「軽井沢浅間高原」は,「10文字という比較的冗長な構成を有する上に,『軽井沢』と『浅間高原』という重複する地域を連記するものである。そうすると,本件商標中の中間に位置する『浅間』の文字が看者に強い印象を与えるとはいえず,離隔的観察の下においては,両商標の外観は,少なくも,看者に近似した印象を与える。」,「本件商標は,15音という比較的冗長な音数で構成されており,本件商標中の中間に位置する「アサマ」の音が看者に強い印象を与えるとはいえず,離隔的観察の下においては,両商標の称呼は,少なくても,看者に近似した印象を与える。」,「両商標は,いずれも,軽井沢一帯の高原地域で製造又は販売されるビールを想起させるものであるから,両商標の観念は,少なくとも,看者に近似した印象を与える。」と認定し,「軽井沢高原ビール」は,「被告ヤッホーの業務に係るビールを表示するものとして,長野県内及び関東地方の取引者・需要者の間に広く認識されていたものといえ,さらに,本件商標の指定商品と被告商品とは同一であって,長野県内及び関東地方において,本件商標の指定商品と被告商品とは取引者・需要者を共通としているといえる。」との理由で,「軽井沢浅間高原ビール」は,取引者・需要者において,同商品が被告ヤッホーの業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるというべきであると判断しています。

おそらく,最高裁においても上記知財高裁の判決は維持されるのではないかと考えています。

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