焼き鳥チェーン大手株式会社鳥貴族は,「鳥二郎」を展開する秀インターワンに対し,ロゴマークやメニューがよく似た焼き鳥店を営業されことで損害を受けたとして,ロゴマークの使用等差止め,及び約6,000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に提起し,平成27年4月21日,第1回口頭弁論が開かれました。
株式会社鳥貴族は,首都圏や関西圏などで「鳥貴族」393店を展開しており,他方,秀インターワンは,京都,大阪,神戸各市で12店を展開していますが,大阪と京都の4店舗では鳥貴族が入居するビルの真上や真下のフロアで営業しており,「鳥貴族」を意識した店舗展開を行っています。
そして,「鳥貴族」は,ニワトリを連想させる鳥貴族の「鳥」のデザイン文字に類似するデザイン文字を鳥二郎が使用していること,鳥貴族においては全品280円とし,飲み・食べ放題コースとして「28(にわ)とりパーティー」というコースを設定しているところ,鳥二郎においてはことを理由に,ロゴの使用,価格設定,コース設定,店舗内装,従業員の服装の使用差止めや,損害賠償を求めているものと推測しています。
ところで,株式会社鳥貴族は,独特の「鳥」のデザイン文字をそのものを商標登録しており,鳥二郎の「鳥」のデザイン文字の使用を商標権侵害を理由に訴えていると思います。
ちなみに,「鳥貴族」の「鳥」の文字は,漢字の元となる甲骨,金文,篆書のいずれにも類似しないニワトリをイメージした独特のデザイン文字であり,「鳥二郎」の「鳥」のデザイン文字が類似していると判断されると思います。
他方,「鳥貴族」のニワトリから連想される価格設定やコース設定,店舗内装,従業員の服装は,これら一連のものが,不正競争防止法2条1項1号の役務の出所を表示するものとして不正競争防止法違反に基づく主張であると推測しています。
店舗の内装や商品の陳列方法によって構成されるものを商品や役務の出所表示として捉える考え方はアメリカでは一般的であり,ファーストフードレストランの店舗内装や従業員の服装等を出所表示であると主張した裁判において原告の主張が認められていますし,アップルストアーの店舗内装は立体商標としても登録されています。
他方,日本では,平成13年にダイエーのプライベートブランドである「PAS」の店舗内装がユニクロの店舗内装と類似するという理由でユニクロが仮処分の申立てを行ないました。なお,本件は,和解により解決しているため,裁判所がどのような考え方を行ったかについては明らかではありません。
西松屋がベビー服の陳列方法が役務の出所表示であるとして不正競争防止法に基づく請求を行いましたが,大阪地裁平成22年12月16日の判決ではベビー服の陳列方法が役務の出所表示として認められることはなく,食堂の内装,外装が役務表示であると主張した事件においても大阪地裁平成19年7月3日判決によって役務の出所表示とは認められませんでした。
このような判決の傾向から判断する限り,「鳥二郎」が全品270円とし,飲み・食べ放題コース「2525(ニコニコ)パーティー」を設定していること,店の内装や従業員の服装が類似することを理由に不正競争防止法に基づく請求を行っている点については,鳥貴族の主張は,認められないのではないかと考えています。
本件の不正競争防止法に基づく請求は,店舗内のイメージを法律によってどのように保護を図っていくかという比較的新しい論点であり,私も強い関心を寄せているところですので判決が待たれるところです。