弁護士視点で知財ニュース解説

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著作権侵害 函館市を訴える

北海道函館市のPR用ロゴマークが自身の著作権を侵害していることを理由に,仙台市の放送作家が函館市を相手に,ロゴの使用差止めと3000万円の損害賠償を求める訴訟を提起したという報道が行われました。

放送作家の方の著作物というのは,「函トーク」という名前の「函」という文字をモチーフに人の顔を表現したもので,函館市のロゴマークも「函」という文字をモチーフとした人の顔を表現したもので,表現そのもののアイデアが共通しています。

他方,「函トーク」は両目にあたる部分が●で表現され,口にあたる部分は三日月型のものが「への字」状で表現されているのに対し,函館市のロゴマークは,目にあたる部分は左側は●であるものの右側は「への字」であり,口にあたる部分は円弧状のお椀型になっています。

この差により,「函トーク」のについては「無表情な人の顔」という印象を受けるのに対し,函館市のロゴマークは,「笑顔の人の顔」という印象を受けます。

「函トーク」が著作物にあたるか否かは,「函」という文字をモチーフに人の顔を表現するというアイデアを表現したものが他に存在しないかということが重要なポイントになりますが,仮に,他に同様の表現がないということになりますと著作物と認められる可能性があります。

次に,前記したとおり両者には表現に異なる点があり異なった印象を与えていますので,複製ではなく翻案にあたると考えますが。

ただ,放送作家の方は,複製権侵害,翻案権侵害及び同一性保持権侵害を理由に訴訟を提起した可能性があります。

この複製権侵害,翻案権侵害が認められるためには,侵害された著作物に「依拠した」こと,すなわち,侵害された著作物を認識し,それを前提に複製したあるいは翻案したということが必要になり,偶然の一致や偶然似たものができたという場合には権利侵害にあたりません。

函館市のロゴマークは,公募によって採用されたもののようですので,応募された方が放送作家の方の「函トーク」を認識していたのか,逆からいえば「函トーク」が応募された方の周りで認識できる程度の知名度があったのかということがポイントとなります。

そして,仮に,依拠性が認められたとしても,複製あるいは翻案にあたるかという問題がありますが,複製あるいは翻案と認められるか否かについても,他の同種の表現の存在が問題となり,他に同種の表現が存在する場合には,それとの比較で「函トーク」の創作部というものが認定され,当該部分と函館市のロゴマークの同一性,あるいは類似性が問題となります。

函館市としては,応募された方に制作に至る経緯等を確認し,応募された方の周りでの「函トーク」の知名度,「函トーク」同様の表現の存否につき調査を行って訴訟を戦っていくことになると思います。

本件は,著作権侵害訴訟の典型的な事例といえるものですので,著作権を理解する上で参考になります。

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