米英仏ロなど36カ国が締結する「特許法条約」と,38カ国締結する「商標法に関するシンガポール条約」への加盟,それに伴う国内法の整備について,今秋の国会において承認が得られる見通しがたったと報道されています。
この「特許法条約」ですが,
- 加盟国では,特許出願の願書は加盟国のいかなる言語でも受付ける
- 願書の書式は,出願者の氏名等,必要最低限の記載があれば形式については問わない(自国の出願書類を加盟国に提出することで加盟国の出願の地位を確保することができる)
- 出願書類に不備がある場合には却下の決定を行う前に補正を促す通知を行う
- 出願国の国内代理人の選任義務規定を排除
が特徴となっています。
「商標法に関するシンガポール条約」ですが,出願にあたり自国の言語を使用すること求めることができるものの,出願手続そのものは大幅に簡略化されます。
日本がこれらの条約に加盟しますと,外国における特許や商標出願を簡単に行うことができ,当該国の代理人を選任する必要がなくなることにより出願費用を大幅に抑えることでき,国内企業のメリットは大きいといえます。
これらの条約は,欧米が中心で,中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などは加盟していません。
報道によると,日本参加を契機に中国やASEAN諸国が日本に追随する効果を期待しているようです。
仮に,中国やASEAN諸国が日本に追随するということになりますと,新興国における出願費用を大幅に削減する効果が見込めます。
また,日本による条約加盟は,難航する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉において,米国と足並みをそろえて新興国との交渉にあたることを狙ったものであるとも報道されています。
これらの条約加盟により国内企業が受けることができるメリットは非常に大きいですので,条約加盟の動機とは無関係に歓迎すべきではないでしょうか。