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特許権侵害訴訟 損害額の立証責任転換

cont_img_64.jpg政府は,特許権を侵害された企業等の被害救済を,より実効的に行われるようにするため損害賠償額に関する立証責任を特許権侵害者に負担させることを内容とする特許法の改正を検討しているようです。

現在の特許法では,特許権が侵害された場合の損害賠償について,損害賠償額の推定規定が存在します。

そして,特許法では,特許権者の単位数量あたりの利益に侵害者が販売した数を乗じた金額,特許権侵害により侵害者が得た利益,ライセンス料相当額の三種類の推定規定が設けられています。

特許製品と侵害品とは市場補完性があり,侵害品が存在しなければ侵害品に代わって特許製品を販売することができたという関係にあるため上記のような損害額の推定規定が存在し,仮に特許製品を販売していない場合であっても無断で他人の特許権の範囲に属する製品を販売することができないため最低限ライセンス相当料の損害が認められることから上記のような損害額の推定規定が存在します。

ただし,特許権者の多くは,自社製品の利益率を外部に開示したくないという理由で,特許権者の単位数量あたりの利益に侵害者が販売した数を乗じた金額を損害として請求することはなく,侵害者に帳簿等を提出させた上で侵害者の利益を損害として請求することが一般的です。

また,特許権侵害の損害賠償請求の法的根拠は民法709条であり,同条に基づく損害賠償請求は,権利侵害がなければ得られたであろう利益(逸失利益)の賠償であることとの関係で,何からの事情で特許権者がおよそ得ることができなかった利益にあたる部分まで請求することができず,当該部分について,特許権者が特許製品を販売していない場合と同様にライセンス相当料の損害に制限されます。

現在検討されている内容は,特許権者がより多くの損害賠償を受けることができるように,侵害者が,侵害品による特許権者への影響の程度について立証する責任を負わせ,当該立証を行うことができなければ一定額の損害額を犠牲するというものです。

現在の損害額の推定をさらに推し進めた制度について検討を行うようです。

政府は,平成27年6月中にまとめる「知的財産推進計画」において,侵害した企業側が負担する損害賠償額を増やすことを明記する予定で,経済産業省などは今年度中に特許法の見直し作業を始めるようです。

アメリカ等においては,厳密な損害発生の立証を必要とせず,重大な過失が認められる場合には実損の3倍までの範囲で損害額を決定することができる懲罰的賠償制度が採用されています。

この結果,アメリカにおいては特許権侵害訴訟において莫大な損害賠償義務が認められる傾向にあり,日本とアメリカとの差は,アップル対サムスンの事件を見ていても歴然としています。

このような状態を放置すれば,海外の企業が日本において特許権侵害訴訟を提起しないという事態に陥り,事実,アップルとサムスンは,和解に際してアメリカでの訴訟は継続するものの,日本を含めた国における訴訟を取下げました。

今回の検討では,アメリカのような懲罰的賠償制度を前提としたものではないものの,特許権者の被害回復をより実効的に行い得るようになるのではないかと期待されているところです。

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